第4話 こうして祭りは太陽の光を反射し色づく

「ねえ、なんで試合に出ないの!!!」


そう俺に顔を膨らませて文句を言って来るのは、おなじみのハツネである。


いつも活発でニコニコしている彼女が、いじけたような顔をしても可愛いなと思ってしまう。やはりかわいいは正義か…


考えていることが顔に出ていたのか、今まで以上に頬をふくらませ私怒ってますアピールをさらにしてきた。


「あーごめんごめん、俺はちょっとやることができちゃってさー、出れなくなっちゃった」

「むう、そんなに大変なことなの?私も手伝うから試合に出ようよ〜、今からならまだ、試合の申し込みは間に合うよ?」

「ごめんなー、ハツネは試合に出て俺の代わりに試合を楽しんでくれ。」


頑張れと、応援のメッセージを掛けると、今度は頬を緩めてニコニコとする。

ちょr…じゃなくて素直だなあ。


「それにしても、ものすごく華やかになっているな、いつもの光景とは大違いだ」

「そうでしょ?私たちが頑張って飾りつけをししたの!」


褒めてと言わんばかりに、胸を張ってドヤ顔を決めるハツネは見ていてとても微笑ましいい。


胸は残念だが…大丈夫、成長期はこれからだ


「どうしたの?私のお胸に何かついてる?」


ハツネは自分の胸に手を当てながら聞いてくる。


止めてくれ!俺にそんな純粋な疑問と目を俺に向けないでくれ!

罪悪感がチューインガムのように膨らんで、今にも割れてしまいそうだ。


「…いや、その花のネックレスがとても似合っているなと」


苦しい言い訳だが、ちょr、じゃなくて素直なハツネなら信じてくれる


ちょうど花飾りをしていてくれて助かった


まあこれで、信じてくれなければ、社会的に終わるのだが…


「ふふふ!!!いいでしょこれ!今日、アネットちゃんにもらったの!この前のお礼と今日勝てるようにって!」


まるで花が咲いたように笑う。水色の髪の毛もあいまって、快晴の空が幻覚として見えてしまいそうなほどだ。


俺は、こんな子にセクハラまがいの思考をしてしまったのか…


萎んでいた罪悪感が再び膨れ始める。なんか罪滅ぼしをしなければ、俺が罪悪感でつぶれてしまう!


「ハツネ~なんか俺にできて、してほしいこととかある?」


出来れば罵ってほしいです。罵られないことがこんなに苦しいなんてしらなかった。


「じゃあ!、試合で1番取ったら、お願いこと一つ叶えて欲しいな!」

「そうだね、その時はどんでもいうことを聞きますとも」


俺を踏みつけて、罵倒するんですねわかります。


そう言うとハツネはやったー!とその場で一通りはしゃいだ後、約束だからね!と言い残し走って去っていった。


そんなに俺を踏みつけたいのか…


そんな姿を手を振って見送りつつ、再び静まり返った祭りの会場を見わたしている。


やっぱり、変わんないか…ハツネが居なければ、あんなに華やかに見えた会場が灰色に色あせて見えてしまう。


「さてと、じゃあ俺も俺で準備をしようかな」


呟き上を見上げてみると、今にも落ちてきてしまうのではないかと錯覚するほどの曇天だった。




§






今頃、村の方では、試合の決勝戦が行われているのかな?


見守り隊の隊長としては彼女の晴れ舞台をみることができないのは残念で仕方がないが、どうやらそう言ってはいられないようだ。


眼前にはおびただしいほどの魔物がまるで軍隊のように方向を定めて行進をしている。


運ばれてくる風には、鼻が曲がってしまいそうなほどの獣臭。そしてうっすらと血なまぐさい匂いも混ざっている。


思わず焼き払え!!と声に出してしまいたい光景だが、生憎、俺が光線を放ったところでやけ石に水であろう。


残念ながら光線が爆発するような物理現象は知らないのだ。


予想以上だな…村に侵攻している間魔物の量が尋常じゃない。


やべえ、しくじったかと頬に汗が伝う。


「まあそうは言っていられないか…今すぐにでも行動に移さないとマジでシャレにならないかもしれない。」


事前に立てた作戦では、魔物の進行に対して正面に立ち、殲滅する予定であったが変更をしないといけない。


これだけ魔物の数が多いと進行方向に死体の山が出来上がり、一列であった魔物の群れが2列、またはそれ以上に増えてしまい、俺一人だと手に負えなくなる。


故に、今からは作戦を変更しなければならない。


太陽は厚い雲に覆われ、一日の終焉である夕日を拝むことができない。それに加えて、雨がいきなり降り始め、サーっと、木々が泣き始めたような不気味な音にあたりが包まれる。


「よし、行くぞ!!!!」


魔物約千6百匹vs俺一人、シアンによる魔物の殺戮が始まった。







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