第2話 人生はつり合いが取れている

村で、主人公であるあろうハツネをみかけた後、俺はこの村を守ろうと決意した。いや、決意はしてねえや、そんなに固い決断ではなかった。


じゃあなぜ守ろうとしたのかというと、俺にはどうやら魔法の才能があったからだ。


この世界の住人には一人ひとり、自分特有のの魔法の術式を持っている。しかしその術式の有用性に関しては人それぞれで、ピンきりである。


もちろん、魔力の量にもよるのだが…キリ( ・ิω・ิ)



術式の種類としては、身体能力が上がる術式だったり、体を硬化させる


もう一方は、触ったものを腐食させ、凍らせたりするである。


そして意外なことにこの世界では、魔法と魔術は区別されている。


魔術とは個人個人に刻まれている術式によって施行される現象を表している。これに関しては、自分の切り札的な部分でもあるので、自分の術式に関してはあまり人に言いふらさないことが多い。


そして、魔法とは人、個人個人が持っている術式を研究し、魔力の流れを術式保有者に寄せることによって、だれでも使えるにしたものが魔法である。


要約するならば、自分固有の術式が魔術。誰でも使えるようにしたものが魔法である。


故に、戦う時は、自分の魔術と魔法を組み合わせた戦い方や、普段は魔法だけを使い、切り札として自分の術式を残しておいたりするのがスタンダードな戦い方だ。


しかし、自分固有の魔術と違い魔法は所詮は真似ているだけであるので、どうしてもロスが生まれてしまう。


故に、強力な魔術を持っている人は、魔術だけを使用して、魔力を節約するなんていう戦い方をする人もいる。


これはかなりイレギラーであるのだが…


まあ十人十色ってわけだ。


さて、この世界の説明はここまでにしといて、俺のことについて話そうと思う


なんと俺が所有している術式は、


デデデデデデデデデ~~~~デン


ぐちゃぐちゃに壊れて分からないということでした!!


自分固有の魔術を持つことは、自分のアイデンティティーである一面を持っているため、とても憧れていただけにショックも大きかった。


転生の影響があるのかな~


実際2回目の人生が与えられているのだから、文句のつけようがなかった


転生で特典がついてくるどころか、デメリットを抱えてしまうなんて…この世は上手くできている。


まあ、俺がもっている術式が強力とは限らないしいいけどね?そこまで落ち込んでないけどね?


しかし、そんな俺にも、救いはあった。どうやら魔法の才能に関してはそれなりにあるようだ。


魔法と言えども、物理現象を生み出すものであるから、前世の理科の知識は、それはそれは十分に役に立った。


知識は、魔法を施行するにあたってロスを極限まで小さくして、魔術レベルまで昇華させることができたし、いろいろな魔法を最初から施行することができた。


このことに気が付かなかったら、俺は絶対にこの村から逃走していたよ。


え?薄情だって?折角2度目の人生を貰ったのだから無駄にしたくはなかったしな。







§







いつも通り、朝日が昇り皆が起き始める。そんな、大多数の人、同様に俺も起きて、ご飯を食べる。


「シアン、今日は畑の仕事はないぞ?村の皆と遊んで来たらどうだ?」

「え?ああ、今日は休息日か…」


ご飯を食べ終わり畑に向かおうとしたら、お父さんに声を掛けられ今日は休みの日であると思い出す。


この世界は前世同様、週7日制を導入されているのだが、畑の繁忙期以外の時期は7日のうち1日が休みになるのだ。


この日はみんな思い思いに過ごし、子供たちは村の皆と遊ぶ日でもある。


そういう訳で、俺も子供が集まって遊んでいる場所である広場へと向かうことにした。


広場に着くと、もう子供たちは遊び始めている。


こいつら早いな…今からはしゃぐとすぐに疲れて昼頃には電池切れになると思うのだが…


俺は近くにある木製のベンチへと腰を掛けて、ぼんやりとその光景を眺め過ごす。


「やっほー、おはよう!シアン君!」

「うひゃ!!」


もうすでに、ウトウトしかけていた俺に元気でき通る声が突き刺さり、その刺さった傷口から驚きが漏れてしまう。


誰だ?まだ日が高くなく心地よい日差しを浴びていた俺を邪魔する奴は

そう思い視線を向けると、水色の髪の毛をした美少女が現れた。


「なんだ…ハツネか、驚かせるなよ…」

「あはは!ごめんごめん。シアンくんも一緒に遊ばない?」


そう我らが主人公ハツネさんである。俺とハツネとは家が比較的近くであり、見かければすこし話す仲になっていた。


「何して遊ぶの?また騎士ごっこ?」

「うん!!みんなも集まっているから早く行こうよ!」


騎士ごっことは、まあチャンバラとおままごとが融合した感じのものだ。ストーリーもあり、しかしところどころチャンバラをする。


視線だけ横に向けると、子供たちがもうすでに集まっている模様。


これだけ人を集めることが出来るなんて随分と人望があるようで…


「いいけど…俺はまた悪役になるし、魔王役としてここの玉座で座っているよ」

「むう…私はシアンくんに騎士をやってもらいたいのに……」


そんなこと言われても…みんな騎士役になるため、悪役をやっていた俺がが騎士をやってしまうと悪役がいなくなってしまう。


そうなると困ってしまうだろう?


そもそもの話俺が使う武器は剣ですらない


そう説得すると、渋々であるが魔王役になることを認めてくれた。


「まあ、俺は強いからな、他の人が魔王になったらすぐ倒されてしまうだろ?」

「そうだね…じゃあ今度は絶対負けないから!今日こそは勝つんだから!」


そう言ってハツネがみんなのところに戻っていく。


時々ハツネとチャンバラをするのだがこの全てを勝利して終わっている。

なんせ俺は前世で武道をやっていたからな。ハツネを成長させるために時々、教えながらやっている。


物語上ではなぜか、実力を持っている謎の人物そのような扱いになっているかと思うとぞくぞくする。


この世界では、ハツネは剣士であったはずだ。それは彼女の魔術が自己完結型の身体強化系統であるからだ。その才能を伸ばすために、英才教育を施していた。


別に、かっこいいーとかもっと教えてーと可愛くねだってくる彼女に負けたわけではない。


ないったらない。


「やあああああ!!」


遠くで子供たちが劇を始めたのだろう、一段と騒がしくなった。


まあ、俺に所に来るのはもうちょっと時間がかかるだろうし、それまですこし木の椅子で横になるとしよう。


「ほわああ、平和だねー」


あくびが出た、俺に体は節約モードに入ったようだ

今の平和を十分に噛み締めつつ、襲ってきた睡魔に身を任せる。


とりあえず、今の俺の実力ならこの村を守れそうだ。転生してから数ヶ月、夜な夜な家を抜け出して魔物を殺し回っているが、俺の実力は十二分にあるだろう。


まあ、大丈夫、ハツネ、君が悲しむようなことにはならないさ。


そう思いつつ、俺はゆっくり意識を手放した。



ちなみに、騎士ごっこは今回も我らが魔王軍の勝利である。


対ありいいいいい!!!

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