スピンオフシリーズ イケメンメンバー紹介

星の‪りの

佐野光太 ベースギター リーダー 26歳の場合

「待ってください! 俺がバンドのリーダーなんて不適任ですよ」


 佐野光太さのこうたは先月、JPスター芸能事務所の社長、浅加にスカウトされ、契約書の手続きをするために社長室に来ていた。



「お前が最年長ということもあるが、それだけじゃない。お前の冷静かつ優しい性格が、リーダーに適任だと判断したんだ。お前がリーダーなら、ラ・メールブルーは安泰だ」

 浅加はいちいち自分の言葉に頷きながら話している。



「しかし……、りくは知り合いだからまだいいものの、海原かいばらさんやリョウタはまだ顔も合わせてない。俺が皆を上手くまとめられるか……」



「無理にまとめんでもいい。アイツらは個性の強い3人だ。お前はただリーダーとしていてくれるだけで、バンドは自然とまとまっていくもんなんだ」



「……わかりました。そこまで仰るのなら、やってみます」



 佐野光太さのこうたは京都の音楽大学を卒業すると、神戸の実家から大阪のライブハウスに通いながら歌とギターの腕を磨いていた。あの頃は、大阪界隈おおさかかいわいで『佐野光太さのこうた』と言ったら、ちょっとしたプロの有名アーティスト並の人気があった。



 **** 一年前 ****


「光太、東京に行ってデビューするって本当か?」


「うん、東京の芸能事務所の社長にスカウトされたんだ」


「やっと夢が叶うな。お前は、幼なじみの俺から見ても真面目すぎて堅物だもんな。だけど、あれだけ女子にモテまくってきたのにまだ足りないのか?」

 幼なじみの狩野大和かのやまとが笑った。



「まさか! 音楽を本格的にやりたいだけだよ。でも、ソロじゃないからな……」


「ソロじゃないって、グループか何かか?」


「バンドだよ。それもロックに限らずオールマイティにやる、いわゆるポップス系のバンドていうやつだな」


「ああー、俗に言うアイドルバンドだな……。お前はそれでいいのか? 本当は楽器中心の本格的な音楽をやりたかったんじゃないのか?」



「……まあ、そうだけど。でも、俺のギターを日本中の人達に聴いてもらえる最後のチャンスなんだ。これを逃すことはできないからな」


「そうか……頑張れよ! 応援してるぞ」



 **** 自宅 ****


「お兄ちゃん、明日もう東京に行くの?」

 14歳離れている9歳の妹、由奈ゆなが泣きそうな顔で言った。


「由奈、いつでも戻ってくるからね。寂しくなったら電話して! それに、これからはテレビでもお兄ちゃんのこと観れるんだ、うれしいだろ?」


「うん! でも、あんまり有名にならないでね。会えなくなるもん」



 アハハ、と笑って「大丈夫! たとえ有名になってもお兄ちゃんは会いに来るから」と腰に抱きついてきた由奈の頭を撫でた。

 家族は、地元の会社経営の父と母、妹、由奈の四人家族。父は常に仕事に厳しく留守がちだったが、優しく上品な母が子供たちを愛情いっぱいに育ててくれた。もちろん、この時から、礼儀作法や女性に対するマナーを教えてくれたのも母だった。


 そのお陰か、それともいわゆるイケメンで高身長のせいなのか、子供の頃から常に女子に囲まれ、告白やプレゼントが絶えなかった。

 しかし、光太にはずっと憧れている女性がいた。(今後いずれかのpartで解明します)


 光太は大学時代から、休みの日は必ず帰省していたほど、家族思いの真面目な青年だった。



 浅加社長に、ベースギターを担当するように言われた光太には葛藤かっとうがあった。

 まだやったこともないベースは、メインのギターほど華やかさがないが、そのテクニックは付け焼き刃で身に付くものではなかったからだ。


 ベースギターはその名の通り、メロディの土台になるリズムをかなでるものだが、主旋律しゅせんりつを奏でるギターと違い、曲全体を把握する必要がある。

 ベースが崩れると、曲全てが一気に崩れてしまう恐れがあるからだ。


 光太は時々都内のライブハウスでバイトをしながら、昼夜休まず練習に明け暮れた。

 ピックを使うギターと違い指弾きが多いため、人差し指と中指の皮がけ、治る間もなくまた練習を重ねた。



 やがてメンバー全員の顔合わせの日がやって来た。

 先に相田陸あいだりくが事務所にやってきた。バイトに行っていた都内のライブハウスの後輩だ。


「よろしく! 憧れの先輩と同じバンドのメンバーになれるなんて、超感激です! これからが楽しみっす」

 明るめの茶髪と軽いノリで、常にお調子者のイメージだが、どこか憎めない人懐ひとなつこさがある。



 次に現れたのがリョウタだった。帰国子女で父親がアメリカ人、母親が日本人のミックスの青年だ。ブラウンの髪に青い目が印象的で、彼の魅力の一つだった。


「ハーイ、Nice to meet you! リョウタでーす! コータって、なんか響きが似てるね。よろしく!」いきなりの握手とハグで歓迎してくれた明るいアメリカ人というイメージだ。



 最後は一日遅れで海原裕星かいばらゆうせいが事務所に現れた。

 噂には聞いていたが、1つ年下ながら、しっかりしており、意志も固く、他を寄せつけないクールなイメージだった。

 美しい色白の肌と線の細い女性のような整った顔のイメージとは真逆に、男らしいキリリとした眉の下の鋭い瞳の輝きが印象的だった。



 この4人でla mer bleue(ラ・メールブルー)は明日から始動する。

 光太にとっては責任重大の、しかし長年の夢が叶う瞬間が待っている。

 可愛い妹の由奈のためにも、一日でも早く一流アーティストになろうと決意したのだった。



 デビューお披露目コンサートは、ちまたで人気の未開のアーティスト4人が一つのバンドを組んでデビューするということで、更にSNSが盛り上がり、デビュー前から大バズりしていたこともあって、誰もが夢に見るコンサート会場、武道館に決まった。

 もちろん、浅加社長の知名度と人脈の広さ、経営の腕があってのことだった。



 デビューコンサート以来、半年に1度のコンサートは必ず同じ会場で満々席の観客の前で行われてきた。それほど、la mer bleueラ・メールブルーは当初から音楽界を席巻せっけんしたのだった。


 終





 佐野光太プロフィール

 身長176cm 体重64kg 足のサイズ26.5

 京都芸術音楽大学卒業(*架空)

 日に焼けた肌 明るいブラウンヘア

 女性のタイプ 大人っぽい落ち着いた人

 好きな色 ブラウン ホワイト ブラック

 性格 冷静沈着 しかし怒ると怖い ギャル嫌い 人を説得できる話術 理系男子

 趣味 テニス 読書 ギター


イメージキャラクターは、藤ヶ谷太輔さん演じた藤城柊です。




 次回のスピンオフのメンバー紹介は相田陸あいだりくです。本シリーズの合間に投稿いたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る