第30話 思ってたよりも便利な斧
ボス部屋の前に転移した私たちは少し休憩していた。
「ほんとにあれを倒したんだよね? いまいち実感が湧かないや……あと疲れたから早く家に帰りたいー!」
ポーションの効果で今は歩けているけど、地味に足の骨折れているんだよね……
これって帰り道に効果が切れたら詰むのでは?
考えただけで痛くなってきたからこの話は終わりにしよう。
「本当にありがとうございました。あの時、ことねさんに助けてもらえなかったら今頃私は…………この恩はいつか必ず返します!!」
ことりさんはそう言って頭を下げた。
あの時は本当に死ぬと思ったよ。
でも死ななかったし、ことりさんも助かったから全然おっけーだ。
耳が聞こえなくなったりはしたけど、ことりさんが悪いわけじゃない。
それが嫌だったら最初からダンジョンなんかに来ていないよ。
「私たちはパーティなんだからあんなの当たり前だよ!」
「でも……」
「でもじゃないの! いい? 私は別に気にしてないの! だからこの話はもうおしまい! どうしてもって言うなら今度アイスでも買ってもらおうかな」
「分かりました! また今度アイスをいっぱい買ってきますね!」
ことりさんは笑顔でそう言った。
「よーし、さっさとボスを倒して家に帰るよ……ってさっきからあえて触れてこなかったんだけど、どうしてここにゴブリンキングが持っていた斧があるのかな?」
目の前にある巨大な斧。
ことりさんがさっきの部屋から持ってきたとか?
ていうか武器ってゴブリンキングが魔石に変わった時に一緒に消えるんじゃないの?
「やっと気づいてくれましたか!」
「てことはこれを持ってきたのは……」
「はい私です! ゴブリンキングを倒した後もずっと落ちてたので持ってきちゃいました」
ここに持ってきちゃったのはいいとして、この後どうするんだろう。
「持って帰るとか言わないよね……?」
「逆に持って帰らないんですか? せっかくの武器ですよ?」
「せっかくの武器かもしれないけど、そんな大きかったら邪魔だし、そもそも1人で持てないから使えないと思うよ」
ゴブリンキングを倒した時もポーションで強化された2人で持ってギリギリ持てたくらいだからね。
「それは大丈夫です! 見ててくださいね!」
ことりさんは得意げな表情でそう言った。
「斧よ! 小さくな〜れ〜♪」
「ことりさん頭でも打ったの?」
「打ってませんよぉ!」
いやいや、どう考えてもあの真面目なことりさんがそんなこと言うはずがない――ってあれ?
斧が消えた?
「じゃじゃーん! さっきまで2mくらいあった斧が今ではこの大きさです!」
ことりさんの手にはちょうどいいサイズの斧が握られている。
「斧が小さくなった幻覚が見えるよ……ポーションを短時間で3本飲んだ副作用が来たみたい……」
「それは幻覚じゃなくて現実です! 大きくな〜れ〜♪」
ことりさんがそう言うと斧の大きさが少し大きくなった。
「えええ!?」
「実はこの斧、イメージで大きさを自由に変えられるみたいなんです!」
「思ってた以上にすごい武器だった……!」
でもイメージで変えれるのならわざわざ口に出して言わなくてもよかったんじゃ……
「ことねさん、欲しいならあげますよ? ゴブリンキングを倒せたのはことねさんのおかげですから」
私1人だったら倒せなかったけどね……
それにことりさんが持ってきたんだし、ここは遠慮しておこう。
「私は短剣があるから大丈夫だよ」
「遠慮しなくていいですよ!」
ことりさんが優しすぎるからここはあえてスルーする。
「早くボスを倒しに行くよー!」
「あげま……」
「行くよ!」
「はぃ……」
可哀想だけどことりさんのためだから仕方ない……よね?
ボス部屋の扉の先にいるのはいつもと同じゴブリンナイト。
「ここは私に任せてください!」
そう言ってことりさんは嬉しそうにゴブリンナイトを鎧の上から斧で殴っていた。
鎧が壊れるより先にゴブリンナイトのHPが0になったみたいでゴブリンナイトが魔石に変わった。
「この武器めちゃくちゃ強いですよ? ことねさんあげま……」
「あーもうなにもきこえないよーーー!!!」
「嘘は良くないです!」
「念話を使わなかったらほんとに聞こえないからギリギリセーフ……」
「普通にアウトです!」
そんなことを話していたら報酬部屋の扉が開いたのですぐに報酬部屋に向かった。
初めてパーティでクリアしたから知らないけど、報酬って2人分貰えるのかな?
『ダンジョンクリア 報酬:【魔石(大)】』
『エキストラクエストのクリアを確認』
『エクストラボス ゴブリンキングの討伐 初クリア報酬:【
『1分後、ダンジョン入口に転移します』
声が聞こえなくなった後、目の前に2つの宝箱が現れた。
まさかの1人分?
そう思って宝箱を開けてみるとちゃんと2つずつ入っていた。
「2人分入っていて良かったねー!」
「1人分しかなくても私がことねさんにあげるので問題ないです!」
「それならなおさら2人分入っていて良かったよ……」
私たちはアイテムを各自のポーチに詰めた後、しばらくすると入転移が始まった。
「この後スライムダンジョン行く予定だったけどやめていいよね……?」
「あたりまえです! ことねさんはすぐに帰って休んでください!」
そんなことを言っている間に転移が完了し、私たちはダンジョンの入口にいた。
さっきまでスライムダンジョンに行くとか行かないとかの話をしていたけど、ダンジョンの外はそれどころじゃなさそう……
「どうしてこうなった!?」
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