第27話 あたりかはずれか

 ことりさんが壁にもたれかかるとという音が鳴った。


「あっ、まただ……」


 次の瞬間、予想通り騒音と共に壁が動き出した。

 壁は元々あった道を塞ぎ、壁だったところが1本道に変わった。

 こうなってしまったらもうこの道を進む以外の選択肢はない。

 この道の先にあるのは隠し部屋に繋がる階段、もしくはエクストラボスがいる部屋に繋がる階段だ。


「ことねさん、何が起きたの?」


 私は今の状況をことりさんに説明する。


「それって思ったよりやばい状況だよね……?」


「2分の1だからなんとかなるよ!」


「私のせい……」


「じゃない! 気にしないで! それよりもう大丈夫なの?」


 さっきまでフラフラだったから心配だよ。


「はい! 休憩したからもう大丈夫!」


「なら出発するよ〜!」


 そう言って1本道を進み始めた。

 しばらく進むとだんだんと終わりが近づいてきた。


「やっと階段が見えてきたよ。やっぱり今回も2つだね」


「どっちが正解なんでしょう……」


 階段のところ着いてすぐ、ことりさんは2つの階段を見比べ始めた。

 何かヒント的なものがあればいいんだけど……


「違うところとかあった?」


「いえ、私には全く同じに見えます……」


 やっぱり誰が見ても同じにしか見えないよね。

 私が前見た時も全く同じだったし、ここは運に任せるしかなさそう。


「私とことねちゃんが別々に進むって言うのはどうですか?」


「それってどっちか死んじゃうよ? とくにことりさん1人でエキストラボスの部屋に行ってしまった場合は……」


「やっぱり一緒に行きましょう!!」


 切り替えが早い。


「よし、なんとなくこっちにしよう! ことりさん行くよー」


 私は右側にある階段を選んだ。

 理由は特にないよ。


「ことねちゃん選ぶの早すぎない? 普通の人ならもう少し迷ったりするんじゃ……」


 2回目だし、迷ったって仕方ないからね。


「隠し部屋に繋がってますよーに!」


「ように!」


 私たちはそう言いながら階段を降りていった。


「この階段、暗くて不気味。もしかしてハズレの方じゃ……」


「前はあたりの方もこんな感じの暗さだったから関係ないはず……」


 しばらくして階段が終わった。

 目の前には前と同じ感じの木でできた扉がある。


「いっせーのーで、で開けるよ!」


「はいっ!」


「「いっせーのーでっ!」」


 私たちは勢いよく扉を開けた。

 扉の先は少し暗くて奥の方はよく見えない。

 とりあえず中に入ろう。


 中に入ると後ろでバタンと扉が閉まる音がした。

 このパターンは……


「来るよ!」


「来る……?」


『エクストラボス ゴブリンキングの討伐 制限時間は30分です』


『30分後、10階層に転移します』


 声が聞こえなくなると部屋の真ん中に大きな魔法陣が出現し、その魔法陣から4mは余裕で超える大きさのゴブリンが現れた。

 手には2人で持っても、持てるか分からないくらい巨大な斧を持っている。

 殴られただけで一撃で殺されるから斧なんか持ってなくてもいいとは思う。

 こんな怪物本当に倒せるようになっているの?


 怖くて体が震える。

 繋いでいることりさんの手も震えている。

 怖い。

 今すぐ逃げ出したい。

 でも逃げ出せない。

 30分、30分だけ耐えれば私たちの勝ちだ。


「ことりさん、手だけは絶対に離したらだめだよ!」


 ことりさんは無言で頷いた。


 現れたゴブリンキングは周りを見回しているけど、こっちに気づいた様子はない。

 今ならできるかもしれない。


「鑑定っ!」


 私がそう言うとゴブリンキングのステータスが表示された。


 ――――――――――――――――――――――――

 ゴブリンキング

 状態:正常

 HP:ERROR

 攻撃力:ERROR

 防御力:ERROR

 スキル:ERROR

 武器:ERROR

――――――――――――――――――――――――


 ERROR!?

 ERRORなんて表示見たことがない。

 失敗したのかも?

 そう思った私は、もう一度鑑定しようと、表示されているステータス画面を閉じてゴブリンキングの方を見た。


「えっ…………!?」


 さっきまで周りを見回していたはずのゴブリンキングと目が合ったのだ。

 偶然目が合ったとかではない。

 確実に私の方を見ている。


 どうしてかは分からないけど、ここにいたらやばい――そう感じた私はことりさんの手を引っ張って急いでその場から移動する。


 次の瞬間、私たちがさっきまでいた場所に巨大な斧が振り下ろされた。

 1秒でも移動するのが遅かったら私たちは死んでいた――そう思うのも無理はない。

 斧が振り下ろされた床には亀裂がはいり、部屋中に砂埃が舞っている。

 震度7の地震が弱いと感じてしまうくらい部屋が揺れた。


 しばらくして砂埃が収まった。


「ことりさん大丈夫!?」


「私は大丈夫だけど、ことねちゃんの足が……」


 さっきの揺れで部屋の天井が剥がれ、私の右足に落ちてきたのだ。


「これくらい全然平気だよ……」


 足に激痛が走る。

 たぶん骨は粉々になっていると思う。

 でもそんなことはどうでもいい。

 ゴブリンキングに気づかれたことをどうにかしないと……

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