第7話 とある出会い

レブン視点


ふう、危ないところだった。

あと少し処置が遅れたら、この人、助からなかったよ。助けられて良かった。


マイリちゃんを送り出した後、そのまま薬草を取りに魔森の奥に行ったんだけど、その帰りに倒れている男性に出くわしたんだ。

年齢はボクより五、六歳、年上かな?なんか、上等な軍服を着た黒髪の人物で、出会ったばかりの時は、まだ意識があったんだけど、ここまで気力だけで来たのかな、ボクに助けを求めたと思ったら、糸が切れたみたいにぱったりと意識を無くしたんだ。


幸い、例のポーションを持っていたから、そのままぶっかけたら、腹の穴も治って、息も正常になってる。

まだまだ謎が多い、このポーションの効果だけど、今回、改めてその万能ぶりに舌を巻いたよ。

なんでかって?

だってこの人の症状は、毒の状態異常だったんだ。

しかも、面倒なポイズン▪ボアの毒による効果で手足が黒ずんでいたから、すぐに分かったよ。この毒、全身に回ると手足から壊死えしが始まる、ある意味、恐ろしい毒。

けれど、狩りの対象であるポイズン▪ボアは古くから研究されていて、ペリの実から解毒薬が作れる事が分かってるから、初動に解毒薬を飲ませれば大丈夫なんだ。

でも、助けた人は毒を受けてから、かなり時間がが経っていたから、もう手のほどこしようが無かった。すでに手足の壊死えしが始まっていたからね。

だから例のポーションを使ったんだけど、こんなに上手くいくなんて思わなかったよ。完全に手遅れだった壊死えしした手足が、綺麗に治っちゃったんだよ。

やっぱり、このポーション、【伝説級】だよね。


でもね、ある意味ヤバい話しだよ、コレ。


現在、【伝説級】のポーションは、クライアス皇国の皇城にある宝物殿に、数本あるだけとされているだけなんだ。

かつて、皇国に居たとされる天才薬師、ハインシュタイン▪レーゼリア作。ボク達、薬師を目指す学生からは、誰もが一度は憧れる大天才。すでにぼつ後、百数十年経ったけど、未だ彼の偉業に行き着いた人は現れない。

彼は大の変わり者だったらしく、弟子も取らず、薬のレシピも残さなかった。だから、現在ある薬の認定機関、薬師ギルドにおいては、彼の偉業には否定的な見解が多い。

まあ、後世にその薬のレシピを残さなかった時点で、薬師としては失格だからね。


薬とは、万人の為にある公正で開かれた物でなければ、薬としての評価は低くなる。何故なら、薬は沢山の症例や多くの臨床を経て、安全を確認出来たものが、広く市場に流通されるべき物であるものだからだ。

そして、その薬のレシピは、ある一定期間を経たら公開されなければならない。そうする事で量産技術の確立が出来れば、貴族だけでなく、平民まで行き渡る価格の薬が、作れるようになるからだ。


【それがボクの目標】


薬を買えずに やまいを諦める者、高価な薬の購入の為に、借金の末に破産した者、そういった人々が居ない世界にしたい。少しでも、そんな人達に寄り添い、多くの薬を必要としている人に、良質で安価な薬を届けたい。それが、ボクが薬師を目指す理由なんだ。


こんな高性能でも、ボク一代限りのポーションじゃ、なんの役にもたたない。

せめてレシピや研究資料が残っていれば、何とかなったんだけど、全部、あの人達に壊され、燃やされたからね。全く、ロクな事しかしない連中だよ。

あの人達、本当に


まあ、二度と会う事もないだろうけどね。



◆◆◆



◆とある男の目覚め



「う、ああ、は?!」


ガバッ


「ここは?」

知らない天井だ。私はいつの間にか、ベッドの上にいた。

いったい、あれからどうなった?

そうだ、私は二頭の獰猛どうもう鬼熊おにぐまに襲われ、部下と離れたのだ。そして逃げる途中、ポイズン▪ボアの牙に………!

バサッ、腹っ、は、傷がない???はあ?

なんだこれは?

私は夢でも見ているのか?


なら、あの時の私の女神も夢だったというのか?それは嫌だ。あれが、あの人が実在しないなんて考えたくもない。

しかし、あれだけの衝撃を受けて、傷が無いなど……あり得るのか?


「う、頭が痛い?」

なんだ、ん?頭にタンコブが出来てる??


「おい、お前、目覚めたか?」

?!

私が頭を撫でていると、小汚ない平民の子供が現れた。

む、言葉のなまりから判断すると、ここは皇国か?だとしたら、不味いな。


「そなたが助けてくれたのか?世話になったな。すまんが、ここは一体何処なんだ?」



「ここはまだ、魔森の中だよ。でも、身体が治ったんなら、さっさと出てってくれ!」

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