第8話  昼休み

校舎裏に着いた。

翔君が待っていた。遠くで聞こえる遊んでいる声がする。

それに対し、ここは、風の音が聞こえるくらいとても静かだ。

「それで返事は?」

胸に手を当てて覚悟を決めたような様子の翔君は言う。

あまりにも真っ直ぐ、真剣にこちらを見てくるから罪悪感が湧いた。

「えっと」

しかし、協力すると誓ったのはカワイイ妹。

罪悪感を持ちつつも私は

授業中考えていた文を思い出す。

「気持ちはこれに書いたからさ、読んでね。

 あ、あと私は用事あるからさ、

 ごめん、また後で。」

手紙を渡して即座に立ち去る。

私っぽくない手紙に何か言われたくなかったから。それにしても私って嘘つくとき、

“さ”ってつい言っちゃうみたい。

「えっ」

驚く翔君は菜歩をただ見送る。そして、

「みんなごめん。」

と、呟いた。しかし、声が小さすぎて菜歩には

聞くことが出来なかった。

ガサガサとそよ風が吹き、近くの低木が揺れた。

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