第7話 禁断の座禅法。

【! 危険ですので、決して真似をしないでください !】 


 月に何度か気功教室に通っている。


 毎回、練習の最後に座禅ざぜんをする。


 これは私の師匠ししょうS先生の方針なのだが、座禅中にイメージするものは何でも良い。神様でも仏様でも、亡くなったご先祖様でも、とにかく宗教等は関係なく、皆が心身共に健康になれれば問題はないとのこと。なので、外国人の弟子も何人かいる。


 毎回言われるのが、丹田たんでん(おへその下辺り)に気(意識)を集中させること。他にもちゅう丹田(胸の間辺り)、じょう丹田(眉間みけんの辺り)とあるが、これらは長時間気を集中させると疲れたり気分が悪くなったりするので、相当な達人以外はやらないようにと言われている。


 しかしながら、私の好奇心は黙っていなかった。中丹田や上丹田に気を集中させるとどうなるのだろう? と。


 ある日、自宅の自分の部屋で試してみた。


 道場でいつもおこなっているように、背筋を伸ばして胡坐あぐらをかき、深くゆっくり腹式呼吸。そして眉間の辺りの上丹田に気を集中させてみた。


 数分程度は何ともなかったが、十五分ぐらいして、少し頭がクラクラしてきた。


 なるほど。確かに気分が悪くなるんだなぁ。でも、もう少し続けてみよう。


 それからさらに十分ぐらい続け、にぶい頭痛がしてきた。


 もうちょっとだけ頑張ってみよう。


 さらに数分後、脳の奥で何かが小刻みに振動しているような感覚が出始めた。


 たぶん、本当に振動しているわけではなく、錯覚さっかくだろう。


 でも、これはそろそろやめた方がいいかもしれない。


 そう思った瞬間、物凄いスピードで、急に身体が真上へ飛び上がった。


 いや、実際には身体は飛んでいない。飛んだのは……私の中身?


 たとえるなら、大根や人参を土から引っこ抜くのと同様に、まるで脳天から凄い力で中身を引っこ抜かれるような、今までに経験したことのない抜飛ばっとび感(?)だった。


 びっくりして『ワッ!』と声を上げると、すぐにまた戻ってきた。


 時間にして一秒未満だったと思うが、確かに私の中身は身体から離脱りだつしていた。


 S先生の忠告の意味を理解した。熟練者以外は、やってはいけない座禅法だったのだ。


              ❁    ❁    ❁ 


 座禅はいやしやストレス解消等の効果もありますので、皆さんにも是非ぜひすすいたします。


 ですが、冒頭ぼうとうでも喚起かんきさせていただいたように、今回のやり方は、決して真似をしないでくださいませ。

 

 正しく行い、現在健康な方も、闘病中の方も、常に良い状態にしようと働き続けているご自身のお体に感謝しましょう。


 

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