#02 イケメン中1時代



 中学校に入学して中1になると、違う小学校からも集まっているお陰か、それともサッカー部に入部して1年生ながらもレギュラー候補になったお陰か、俺のモテ期が復活して再び女子からチヤホヤされるようになった。 因みに2つ上の幼馴染のアフロは中学ではサッカーを続けて居なかった。


 そしてクラスでは、違う小学校出身の美少女が俺の隣の席になって、仲良くなった。

 俺は小学校の時に付いてしまった「ツンデレだと思ったら、キレると暴れる王子」というマイナスイメージを払拭したくて、クラスメイトやその子には積極的にフレンドリーに接した。


 その子の名前は『アカネさん』

 つい最近まで俺と同じ小学生だったとは思えないほど落ち着いてて、清楚な雰囲気で理知的でストレートの黒髪が似合う綺麗な美人顔なのに胸が大きくて、そのギャップが男心をくすぐる清楚系美少女な女の子だった。

 そのアカネさんの方から「マゴイチくんとお喋りしてると、いつも楽しくてドキドキしてました。 好きです。マゴイチくんの彼女にして下さい」と告白されて、迷うことなく即答でOKした。


 アカネさんとは教室では常に一緒に居て、勉強の事や部活の事なんかをよくお喋りしていた。

 俺はサッカー部があったしアカネさんも吹奏楽部に入っていたから、学校以外ではたまにしか会えなかったけど、週末は二人で図書館に行って勉強したり、アカネさんが俺んちに遊びに来たりもした。


 そんな感じで中1らしい恋人との楽しい日々を送っていたある日、確か中間テスト前の部活が休みの時期だったか。 放課後、少しお喋りをしたくてアカネさんに声を掛けようとすると、コソコソと隠れる様に教室から出て行ってしまった。


「部活は休みのはずなのにドコ行くんだ?」と不思議に思って、俺もコソコソ隠れてあとを追いかけた。


 アカネさんは体育館に入って行き、真っ直ぐ舞台袖に入って行った。 体育館には他に誰も居なくて、「こんなところに何の用だ?」と急いで追いかけると、舞台袖の奥にある倉庫に入って行った。


 倉庫の扉が少し隙間が空いていたので中の様子を伺うと、アカネさん以外にも一人の男子が居た。 何かボソボソ会話をしている様だけど聞き取れなくて、それでも必死に中の様子を観察していると、抱き合ってキスを始めた。


「なんだと!?俺とはまだなのに他の男とはキスするのかよ!」と未だキス未経験の俺がショックを受けていると、その男はキスをしながらアカネさんの胸を制服の上から揉み始めた。


 そこでプッツンした。


 直ぐ傍にマイクスタンドが有ったので、それを持って倉庫の扉を勢いよく開けるとマイクスタンドで相手の男を無言で滅多打ちにした。 5~6回打ち付けるとマイクスタンドがヘシ曲がってしまったので、そこからは蹴り続けた。勿論容赦なくトゥキックだ。


 気付けば教師3人に取り押さえられていた。

 アカネさんが助けを求めて呼んで来たらしい。


 職員室に連行されて事情聴取が行われたので、アカネさんと付き合ってて浮気された話も含めて全て正直に話した。 相手の男は、アカネさんが所属する吹奏楽部の2年の先輩だったらしく、俺は保護者呼び出しの上、相手の家に謝罪に行くように言われたが、俺が職員室で嘘泣きしながらアカネさんに浮気されたことで頭に血が昇ってしまったと涙ながら訴えたお陰で謝罪は無しになった。


 この日、家に帰るとアフロが中学ジャージ姿で押しかけて来たので、アカネさんが吹奏楽部の2年と浮気してたことを話すと、「その2年のヤツって大人しそうなヤツだよねぇ。彼氏居る後輩に手を出す屑野郎ってことで早速拡散!」と言ってLINEで拡散を始めた。


 アフロの拡散のお蔭か、そいつは卒業するまで「陰キャ屑野郎」と呼ばれて誰にも相手にされなくなっていた。 因みにアカネさんの方も俺が嘘泣きしながら浮気されたことをクラス中に説明して回ったお蔭で、「大人しそうな顔してイケメン彼氏をキープ扱いする将来有望なビッチ」と噂が広まり、卒業するまで清楚系ビッチと言われ続けた。




 だが俺の方も、折角回復しかけていたイメージが「フレンドリーなイケメンに見えて、キレると全く容赦しない狂犬」と不本意なイメージがついてしまい、1年と2年の女子からは距離を置かれる様になり、この年もバレンタインのチョコはゼロだった。



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