第41話

何となく気になり少しだけ様子を見ることにした。


ルークさんがそっとブルード伯爵の濡れてない髪にシャンプーを乗せて洗おうとする。


「ちょっと!少しお湯をかけないと泡立たないよ!」


私は慌ててシャワーを出して髪を濡らした。


「すごい、そこからお湯が出るんですね」


あっ、私がシャワーの説明をし忘れていたのだ。


「すみません…説明し忘れてました」


私は頭を下げて謝るともう少しここにいることにした。


ルークさんは泡立ちが良くなった髪をマッサージするように洗っている。


「洗ったら良く流して次はリンスをつけてください。そしてまたよく洗い流します」


「これは、ブルード様すごく滑らかな触り心地です」


ルークさんがそう言うとブルード伯爵は自分の頭を触って驚いている様子が鏡越しに見えた。


「では私は失礼しますね。ごゆっくりおくつろぎください」


3人ともタオルで前を隠していたがさすがに体を洗うとなるとそうもいかないだろうと私は浴室を出ていく事にした。


仕事柄男性の裸は見慣れていてなんとも思わないが見てて気持ちいいもんでもない。


私が下がろうとすると…


「説明感謝する」


黙っていたブルード伯爵が声をかけてきた。


「え?」


そんな事を言われると思わずに私は驚き振り返った。


しかし伯爵はこちらを見ることなく背中越しに声をかけてきたみたいだ。


「ブルード様からのお言葉だ!ありがたく思え」


むか!


せっかく少し伯爵の事を見直しかけていたのに兵士の言葉にまた怒りがよみがえった。


私は無言で頭を下げて扉を閉めた。


脱衣場に戻れば今度は見張りの兵士達がウロウロとしている。


本来なら着替えたりする場所で暑苦しい服を着たままの彼らは暑そうで少し可哀想になった。


お客さんも来なそうだし…


「すみません、少し席を外しますね。すぐに戻りますが何かあれば大声で呼んでください」


兵士達に声をかけて私は家へと走った!


急いで戻ってくると案の定お客さんは来なかったようだ。


私は持ってきた麦茶をコップに注いで兵士達に配った。


「こんな施しを貰う訳には…」


そうは言いながらもゴクリと唾を飲み込んで麦茶を見つめている。


「ここで倒れられる方が困ります。いいから飲んで!」


グイッと無理やり渡す。


「すまない、感謝する」


兵士達はぼそっと囁くような小さな声でお礼を言った。


「どういたしまして、おかわりもありますよ。お金は後で伯爵様に請求しますから気にしないで飲んで下さいね」


「ぶっー!」


そう言うと盛大に麦茶を吹き出した。


「な、なんだって!」


「嘘ですよ」


クスクスと笑うと顔を真っ赤にしながら吹き出した麦茶を拭いていた。


「はい、どうぞ」


出してしまった分注いでやる。


「この事は伯爵様達には内緒にしときますから気にせず飲んで下さい。早く飲まないと証拠隠滅できませんよ」


「む、わ、わかった」


兵士達は慌てて麦茶を飲むとコップを下げに来てくれた。


中には下げながらお礼を言う人もいた。


サッとコップは見えない場所に置いて待っていると火照った顔の三人がちょうどいいタイミングで浴室から出てきた。

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