第2話

「お父さん!おじいちゃん!ちょっときて!」


私はボイラー室にいるお父さんとおじいちゃんを引っ張って外へと連れ出した。


「なんだマキそんなに慌てて、店に行列でもできてたんか?」


お父さんが冗談交じりにそんな事を言うが今はパニックでそれに答える余裕はない。


渋々着いてくる二人を外に連れ出してみると私達と同じ反応をしている。


ポカーンと口を開けて周りを見つめていた。


「こりゃどうなっとる」


おじいちゃんが口を開くとみんなが顔を見合わせる。


「私達…同時に夢見てる?」


「でも銭湯はあるぞ…それに痛い」


お父さんが自分の頬をつねると、その場所が赤くなる。


私も自分の状況を信じられないが夢を見ているとは思えなかった。


しっかりと風を感じるし、地面に立って感覚がある。


私達がオロオロとしながら銭湯の前を彷徨いていると…


「おい!そこの者、何者だ。誰の許可を得てここに屋敷を建てた」


「きゃあ!」


怒鳴る声に顔を向けるとそこには鎧を着た人達が槍を構えていた。


「マキ!母さん!」


お父さんが私達を後ろに庇って鎧の男の前に立った。

その隣にはおじいちゃんもドンと構える。


「おい!人に刃物なんて向けるもんじゃない」


冷静に鎧人に話しかけている。


「それは無理だ!いきなりこんなところに屋敷を一晩で建ててそんな奇っ怪な格好をしている…警戒しない方が無理だろ!」


よく見れば鎧の男も震えていた。

私達を怖がっているようだ。


「お父さん、そんなに睨んだらダメよ。すみませんお兄さん、私達もなんでここにいるのかわからないのよ」


するとお母さんがにっこりと笑って鎧の男に話しかける。


お母さんののんびりとした緊張感のない喋りに、鎧の男も少し警戒を解いた。


「ま、まぁ幼い女性もいることだし…何も危害を加える気がないなら一緒に来て少し話を聞かせて貰えないだろうか?」


鎧の男も槍をおろして落ち着いて話しかけてきた。


「ね、お父さん。話せばわかるわ、それに帰る手がかりが掴めるかもしれないわよ」


お母さんは笑ってお父さんの袖を引っ張った。


「ここにずっといても何も分からんしな、ここは言う通りにしてみようか」


おじいちゃんの言葉にお父さんは頷くと一応家中の鍵をかけてから鎧の男について行くことになった。


男について行くとそこは外国の街の様な雰囲気だった。


昔修学旅行で行ったアミューズメントパークの様な異国の雰囲気がする。


街にいる人達も今の時代では着ないような服を着ていて私達の様子を興味深そうに見つめていた。


「何ここ、どっかの遊園地?」


私がみんなにコソッと話しかけるがみんなは答えずに首を傾げるだけだった。


そのまま人通りの多い方へと連れていかれるとお父さんが渋い顔をする。


「騙されたか…」


ボソッとそう言うとみんなにくっ付いて歩くように指示を出した。


私とお母さんは腕を組んでお父さんとおじいちゃんの後ろをピッタリと歩く。


すると大きなお城の様な御屋敷の前で鎧の男の人が止まった。


屋敷の前には同じように鎧を来た人が立っていて何か話しかけると門を開いた。


「領主様に会ってもらう、失礼の無いように」


「領主?」


「お父さん、領主って何?」


私はコソッとお父さんに聞くがお父さんもよくわからんと眉間に皺を寄せた。


屋敷に入ると鎧の人が増えて私達をとり囲んだ。


そしてそのまま廊下を歩いて中へと向かうと、特殊な喫茶店にいるようなメイド服を来た人や燕尾服を来た人と数人すれ違った。


「本当にここどこよ…」


さらにパニックになっていると鎧服の人が声をかけた。


「止まれ!」


すると大きな両開きの扉の前で足を止めた。


ノックして扉を開くと中へ入れと促される。


中は小さな小部屋の様な空間でさらに奥に扉がある。


「男の人は武器が無いか確認させて頂く」


「そんなもん持っちゃいない、調べるなら調べろ」


お父さんは半分投げやりに腕をあげた。


体を服の上からポンポンと叩かれると不思議そうな顔をする。


「こりゃどこの服だ、凄く肌触りがいいな…」


調べた男がお父さんの服を不思議そうに見ていた。


そして武器が無いのを確認すると奥の扉を開いた。

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