一日一首(令和五年七月)

「羨む」も良しと思はねど「妬み」には陰湿なる敵意さへ感じて拒絶す


「西瓜で~す」と女の声で宅急便。息子の鳥取土産が届く


百頁の 「爺医の繰り言」 校了せり。 電子書籍にて いざ配布せむ


斑入り柳の白露錦に絡まりて緋のクレマチスが小花を咲かす


朝露に松明花の赤うるみベルガモットの香りの甘き


日はちがへど間引き菜の味は同じなり。いつの日かならむミニキャロットに


けふ七夕、庭の各所に紫陽花が色とりどりに咲きそろひたり


「日本」なるわが国の名は六八九年の浄御原令(きよみはらりやう)に記されしが初


炎天に我慢できずに南天は小花をポプコーンのごとく弾けさせをり


忘れ草二輪ならびて咲けれども一輪いまだ受粉せぬまま


豹柄の花弁三枚で虫さそふアルストロメリアはインカの百合らし


ミニピーマン唐辛子のやうに成長せし陰にミニトマトも我が家の菜園


サーバーの短編読みて途惑ふは傍迷惑なユーモアセンス


病院名「健生」にこそふさはしき女性老年内科を企図す


スマホには二十分後に大雨と。急ぎ戸を閉め襲来を待つ


梅雨つづき色づき乏しきミニトマト、緑のままで夏の陽を乞ふ


長雨で無残にも実の割れしミニトマト、スープの皿に赤と黄うかぶ


糠床にミニピーマンが漬けてあり塩加減よく玄米にあふ


うち並ぶグラジオラスの朱の花が火炎のごとく梅雨空に向かふ


朝どりの野菜を買はんと籠さげて飯も食はずに妻は出かけぬ


BMI45超の女性を診て健診医われは言葉を選ぶ


朝庭に露ふくむ四輪の白桔梗、紙細工とも見えそと手触(たふ)れけり


大暑の候、熟ししミニトマトを摘みてすぐサラダに加ふなまぬるきまま


梅雨明けて花魁草は咲きはじむ。白とピンクが競ひ合ふごと


十時まへに三十度超ゆる大暑の候。書斎でクーラーを試運転し涼む


夏陽あび燃えたつごとき雛菊は木陰の椅子みて何を思ふや


湧きあがる夏雲に届けと吾が背丈を超えて咲きたりピラミッド紫陽花


二十年余で制度破綻か介護保険。我が余生には当てになるまい


朝未だき寝室に吹く涼風に夜具を引き寄せまたひと眠り


鈴生りの赤ミニトマトを撮りしあと完熟せしものを選び収穫す


冷凍の鹿児島県産蒲焼をチーンして夕餉に。土用の丑の日

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