第4話 真夜中の攻防


「はあ、やっと着いた」


 俺が何とか家着く頃には、時計は10時を示していた。俺はカバンから鍵を取り出すとガチャリとドアを開けて家に入る。


「一応ただいまー」

「お帰りー。一応ってことは、今からどこか行くの?」

「うん」

「そうなの。また、澪ちゃん家ね?」

「今から、俺が行くところなんてそこしかないよね」


 家に入ると母さんが姿を現した。父さんの靴はないので、まだ帰ってないんだろう。


「あぁ、届かないといけないものがあってね。じゃあ、行ってくる」


 俺はそう言うとすぐさま家を飛び出した。


 だからだろうか?


「待って澪ちゃん家行くなら、これを持ってて」


 という母さんの声が聞こえなかったのは。


 ピンポーン 澪の家は本当に隣なのですぐに着く。俺がインターホンを鳴らすとすぐに扉が開いた。


「はあはあ、てっちゃんどうしたの?」

「いや、澪。それこっちのセリフ」


 目の前には、息を切らしているパジャマ姿の澪が立っていた。


大方、俺が鳴らしたのだと分かって飛んできたのだろう。澪って、俺にヤバイ匂いでも付いてるんじゃない?ってくらい俺の接近に敏感だからな。


 クンクン 本当に俺が臭ってるわけじゃないな?


「それでどうしたの? こんな遅い時間に」

「あぁ、これを拾ったから届けに来たんだよ」


 そう言って、俺は学校で見つけた「仮面ヤサバ」のストラップを澪の手に握らせる。


 澪はパアァァと顔を輝かせたのち


「ありがとう」


 お花でも咲くんじゃないか? と思わせるような笑顔満開の感謝を伝えてくる。可愛い。

 普通に可愛い。


 しかし、何かに気がついたのか顔を突然しかめた。どうしたんだ?


「たまたま拾ったわけないよね? まさか、探し回ってくれたんじゃ?」

「そ、そんなことないよ?」


 うっ、相変わらず変な所で鋭いな。でも、本当のこと言ったら澪は自分を責めちゃうだろうし。


「じゃあ、どこで拾ったの?」


 くっ、そんなこと指摘されると思ってなかったから理由を考えてなかった。どうしよう。でも、何か何か言わないと…!!


「えーえっと、俺が家にいたら突然「異空間のゲート」が開いてポトッてこれが落ちてきたんだ」

「明らかに嘘をつかないで!! ってか、設定謎に厨二めいてるし」


 ま、まずい。何故か信じてくれない。くっそ、俺なら100パーこの嘘で騙される自信あるのに。


「ほ、本当はだな。えっと、つい先ほど俺の家に隕石が降り注いだわけだが…その隕石を割ってみると中から桃太郎が出てきたんだ」

「うん、今私は何からつっこんでいい物か悩んでいるよ?」


 そして何故かすぅっと息を吸い込む澪。限界まで口に空気を入れようとしている。正直、俺からするとほっぺ膨らませてるようにしか見えないんだけど!?


「私の家隣なのによくそんな隕石が落ちてきたとか嘘つけたね!? 逆に尊敬するよ?」

「お褒めのいただけたようで、至極光栄にございます」

「褒めてないし! そして、急に何キャラ!?」


 これで終わりかと思ったが澪のマシンガンツッコミは止まらない。


「そして、桃太郎何で出てきてるの!? 最終的にこのストラップが一切出てこなかったんだけど!? これ何の話だったわけ!?」


 それを言い終えると ハアハアと疲れたのか息をつく。そんな澪に俺は一言。


「大丈夫?」

「てっちゃんのせいなんですが?」

「俺としては誤魔化せたと思ったんだがなぁ」

「誤魔化せたとか言っちゃってるし。もう、隠すの無理があるよ?」

「あっ!!」

「気がつくの遅すぎない!?」


 くそ、誤魔化せたと思ったのに。何でだ、何でだ!


「ちょっと待ってて、今から他の理由考えるから」

「考えるとか言ってる時点でアウトだよ!

 もう、隠さないでよ。わざわざ探しに行ってくれたんでしょ?」


 口を少しとがらせて言う澪。どうやら誤魔化すのはもう無理ぽいな。この俺の完璧な言い訳を見破るなんて…いつも思うけど澪はすごいよな。…何故かヨウにも見破られるけど。


「…本当は学校まで探しに行った。でも、それは俺のためだから」

「やっぱり…って、てっちゃんの為って?」


 心底不思議そうに尋ねてくる澪。


「澪が辛い思いをしているのは俺も辛いってだけだよ。だから、澪に辛い顔をして欲しくなくて探しに行っただけ…全部俺の為だから気にしなくていい」

「そう」

「ああ」


 納得したようで優しく微笑む澪。そして、


「じゃあ、明日からお弁当作ってあげるね!」

「はぁ!?」


 とんでもないことを言い出した。


「いや、だから俺の為だから気にしなくていいんだって!! お礼なんてしなくても」

「フッフッフ」


 何故か得意そうに笑う澪。いや、どちらかと言うとドヤ顔だな、あれ。どうしたんだ?

 そして、ドヤ顔の澪は俺に言い分を伝えるのだった。


「お礼? 違うよ? これは私の為だから気にする必要なんてないの」

「これは一本取られた」

「ふっはっはっは、学年2位討ち取ったりぃ」

「次回は1位取るから、2位2位言うな!」

「あっ、うん」

「何そのどうでも良さそうな顔! 俺にとっては最重要案件なんですが!?」


 それにしても明日は澪の手作り弁当かぁ。

 少し期待に胸を膨らませる、単純な俺でした。単純で悪いかよ!?



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 単純でチョロい主人公! 主人公…勉強はできるけど元はバカですからね。テストは努力の結果!! 日常生活ではボロが出ます。天才タイプじゃなくて努力で1位まで登り詰めた奴なので。


 次回、澪の手作り弁当。それを聞いた泡瀬さんの反応は?


 良ければ評価お願いします。じゃあ〜。


 追伸 投稿のペースが落ちます。すみません。

 夏休みが終わるので。

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