第40話 あなたではありませんの 【瑞穂】
ここ最近、お庭で一樹さんを見なくなりました。
今日は一花さんもお休みみたいです。
奥様である一花さんは、同じクラスメイトなので、ご挨拶はしていますが、いささか顔が引きつっておられるようです。
以前、お話した『セックスフレンズ』に関してのお返事どころか、その後の事すら聞いていないので、そろそろ、なんらかの明確な答えとまではいきませんが、どの様に考えているのか、お聞かせ下さうと、私としても、次の行動に移りやすのですが、こういう男女の事です、しかも奥様を交えていますので、いささか時間がかかるのでしょうね。
と思いつつ、教室で一花さんがこちらを見ていたので、軽く会釈すると、目をそらされましたわ。
やはり、時間が必要なのですね。
私、一樹さんはもちろん、一花さんとも仲良しになりたんです。
それは、二人のセックスフレンドにないたいということなんです。
一樹さんはもちろん、一花さんも大変魅力的な人です。
そうです。私、一樹さんだけでなく、一花さんにも、こう、なんと言うのでしょうね? つまりですね、私、一花さんにもムラムラするんです。
だって、彼女、可憐ではありませんか?
聞けば、中学生の頃から人気があったと聞きます。
この前も、ここの教師に人妻あるにもかかわらす、熱くプロポーズをされていたと、その教師は自分の職業をかなぐり捨てて、彼女に告白したのです。
背水の陣などと生易しいものではありませんわ。
むしろ、生きる事を、人生を捨てる行為です。
それほどまでに一花さんは魅力的なのでしょうね。
私は、別に、彼らを略奪しようなんて考えてはいません。
あの、仲の良い二人と、一花さんと一樹さんの仲間になりたいのです。お二人とも愛しているのです。
私、最近まで、こんな気持ちが私の中にあったことに驚いているんです。
これでは、まるで変態さんみたいです。
でも、胸は熱くなります。
はしたなく、濡れるのです。
でも、もう止められないのです。
家の物にプロを雇って調べさせましたが、彼らはストーカーすら飼いならしているというではありませんか。
なれば、私一人くらい増えてもどうということもないでしょう。
特に一樹さんの家庭は、ご両親も自由恋愛を楽しんでおられたのだとか。
結果、あの事件になってしまったかもしれませんが、それでも、彼らに後悔は無いと思うのです。いいえ、あってはいけないのです。
今のこの世界で、子供を増やして世界を明るくする必要があります。
ならば、私が、あの夫婦の中に入って、それに協力するのも、あり、だと思うのです。
私も、一樹さんの子供を、ゆくゆくは出産したいと考えています。
一花さんと二人で、十人くらいの子供を産めば、きっと世界は救われるでしょう。
私もうれしい。一花さんもうれしい。一樹さんもうれしい。
全て上手くゆくと思うのです。
素敵な未来です。
明るい将来をそうぞうしながら、私は一人でお弁当を広げます。
いつも一樹さんと一花さんが昼食を食べるベンチで、一人です。
そんな私に声がかかります。
「なんだ? 数藤を待ってるのか?」
見ると、ああ、ここの教諭ですね。確か……
彼は私の横にストンと座って、
「あいつら昨日から、警備対象になっててな、今日は二人して、今後の警備について相談しに、警察署に言ってるんだ」
っていいます。
「はあ」
って返事をします。それはわかっています。叔父からも情報は入ってますから、でもここで、知ってるなんて言ったら、私は国家権力を利用できる立場だって、この正体不明の先生に明かしてしまうことになりますので、ここは黙りましょう。
そして、その先生は言います。
「なんで、あいつがモテるんだ? あんまりパっとしない男だよな?」
その声は、笑っている、いえ、いい笑い方ではありませんね。そうですねせせら笑っている、という感じでしょうか?
「やっぱり、あれか? 幸せそうだから、酔ってしまうのか?」
その言葉に私は、自分の中に思い当たる節がなくて、ちょっと戸惑いを表してしまいます。
「まあ、交際にも性にも未熟な高校生だ、やっぱり刺激が強すぎるのかなあ?」
と、その先生は空を仰ぐようにつぶやきました。
そして、
「なんで、あいつらばかりが上手く行く?」
まるで嫉妬するみたいに呟く先生です。
それにしても、私、普通クラスの先生はあまり存じ上げてはいませんの。
一体、誰なのかしら? この男?
好きにはなれない匂いを感じます。
妙になれなれしいし。
顔はかっこいい部類です、スタイルもいいし。背も高いです。歳も、若くて素敵な先生っていえるくらいの年齢だと思います。
でも、少しの嫌悪を感じてしまいました。
だから思うのです。
この男は違う。
私の範囲に入ってこれる異性は一人なんです。
私の求める、私が許せる男は一人しかいないと。
私を触れても良い、息がかかりそうな距離で言葉を買わせるのは一樹さん一人しかいないと。
そして、ここにはいないのです。
薄寒さ? 足が地につかない、妙にソワソワと…‥?
ひとしきり不安を覚えて私は、その教師に失礼の無いように、軽く挨拶して、その場を離れました。
入れ替わりに、女子が数人、その男に駆け寄ってきます。
甘く、ささやくような声で、女子はその先生を呼んでいました。
高根先生というのですね。
女子生徒は普通クラスの様です。
私には関係ありませんね。
次の授業の事を考えながら、ふと思うのです。
一樹さんと一花さん、明日は学校に来てくれるのかしら?
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