第13話 3連休

 暇だ…。


 直塚先生を、思わず殴ってしまってから、2日が経過してた。


 課題やら反省文やらは書いたしな。


 朝の分の洗い物も終わっちゃったしな。


 うう、指が痛い。


 思わず、簡易ギブスとそのカバーで不格好に覆われた遺文の右手薬指を見る。


 なんでも、この手の怪我って治りかけが一番痛いという話らしいから、きっと治ってきているのだとは思う。いや思いたい。


 でもまあ、ビニルしてると、こうして洗い物も、さっきは簡単な料理もできたから、それほど生活に支障はないんだ。


 昨日もちゃんと一花とエッチできたし。なんか彼女積極的だったんだよね。てっきり、『怪我治るまで』もしくは『停学が解けるまで』SEX禁止って言われるものだとばかり思ってたけど、そんな事なかった。がっつり襲い掛かられた。


 それでも、一花は僕に気を付かってくれて、僕の方はそれほど動かないで彼女を楽しませてくれた。


 深夜、消灯して真っ暗な室内で見上げる一花はやっぱり綺麗で、寝室の高い位置にある窓から取り込まれた光が彼女の半身に反射して、輝く白くて透き通った肌もさ、まるでこの部屋、ううん、世界に溶け込んでいるみたいみえて、僕は彼女を抱きながら、まるで世界にでも抱かれている気分になってたよ。


 とても深くて、不思議で、満ち足りていて、そして気持ちよかった。


 その日いあった出来事なんてまるでとるにならないくらい。


 本気でどうてもいい事の様に思えたんだよね。


 きっと世界は、ここを中心に動いているんだ。


 一花の体に触れる僕の指。


 柔らかな肌を、こんな無骨なカバーで触れてしまうのは、どこか贖罪めいたものがあって、左手ばかりで触り続ける僕に、一花は穏やかな波の様に僕の上から、


 「痛い?」


 って聞いてくるから、


 「痛くはないっよ」


 って言ったら、彼女は両手でさ、包むように、不格好になった僕のギブスのついた手を、指を、自分の左の胸に押し当てるんだ。


 そして、また、


 「痛くない?」


 って聞くから、


 「平気だよ」


 って答えて、僕は右手でも、一花の胸を、そのふくらみと、先端の硬くなった、その場所をつかむんだ。そして放す。で、掴んでまた離す。


 その繰り返しに、痛みが走る。


 電撃みたいな痛み。


 顔には出てないと思う。


 ちょっと我慢するかな……


 手を、その胸から離そうとすつ。


 そんな決心を一花の声が邪魔をする。


 ああ、ダメだ、小指と一緒に薬指も動いてしまうけど、止められない僕がいる。


 まるで海をつかんでいるみたい。波を、だから水をつかむみたいになってる僕の両手。でも、この海はけっして僕の指の隙間からは零れ落ちることがない。


 未来永劫、僕だけのもの。


 これだけは譲れないって思う。


 だから、そんな一花を、言葉の上にでも汚されたら、こんな僕でも怒るさ。


 それは、彼女の名誉とかを考えた上ではないって事も知ってるし、たぶん、原始的で野生な僕が僕としての男の本能だったんだ。


 彼女を、一花をビッチって言ったとか、淫乱って言ったとか、そんなのは嘘なんだよ。


 あれは、優のついた、一花にとって、生理的に気持ち悪くグロテスクなものを見せない様にって配慮だったんだよ。


 本当は、あのクソ教師、僕に向かって一花を一晩『貸せ』って言ってきたんだ。


 絶対に許すわけにはいかなかった。


 だから、僕は僕の為に、暴力でその答えを返したんだ。


 原始的対応って事だね。人で男で生き物でオスである以上、全力で行った。


 さすがに一花に関して、あの物言いに対して、黙ってるって、ただヘタレておくことはできなかったから。


 先生なんて殴って人生を棒に振っていいのかって、そんな考えもあるけど、僕にとっては一花が全てだから、それはいつまでの変わらないから。全部に対して全部で賭けたって事だね。


 そのことを思い出すだけでむかむかしてくるので、本日の夕食のメニューは激辛カレーにしようとあ思う。


 ともかく謹慎処分の僕だけど、基本、家にいないといけない僕だけど、食べることは生命にも直結してるので、遠慮なく外出させてもらう。


 愛する一花の為にも、やっぱりお肉は鳥だな、ってこの辺は揺ぎ無くエコバック片手に家を出る僕だったよ。


 3連休、明日で終わっちゃうのかあ……

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