第6話 親友→キス←夫………私?……私!!

 私はその時、ゆっくりと西校舎階段を上がって、一樹の待つクラスに向かっていた。


 私と一樹の教室って、ちょっと離れてるのよね。というか校舎別。


 私が東棟で、職員室のある中央棟を挟んで西棟が一樹のいる校舎。


 真ん中に職員校舎が4階建で、移動教室やら、部室やら沢山はいてるから、窓開けてみても一樹の顔は見れない。残念だけど、お互いが学校内でのコースが違うからこの編は仕方ない。


 これは私の夢の為でもある。


 ともかく、稼げるようになりたいの。


 私一人の収入で一樹を養えるくらいに。


 だから、今は勉強を頑張るの。


 それが私達の将来の理想なんだよね。


 だって、一樹の方が家事とか得意なんだよ。


 私の倍の速度で動いてる。


 で、掃除洗濯料理その他もろもろ、全く嫌がってないし、むしろ好んでやってるし、わたしみたいないい加減な家事にならないのも凄いと思ってる。ていうか、感謝してる。


 食器洗い洗剤とか、洗濯洗剤なんて、新商品が出ると敵ずチェックしてるの。必ず一回は使ってる。


 で、その後、前のと比べて考察してるんだよね。


 あ、一樹ね、エプロンも自分で作ってたんだよ。


 もうね、自慢げに私にその姿、エプロンの姿見せてくれた時なんて、ホント、ハワワってなったよ。押し倒しそうになったよ。


 やっぱ、可愛いなあ一樹。もう可愛すぎて社会になんて出せない。


 一生閉じ込めておくんだ。


 でもね。


 油断してると学校にいる間一樹に会えない。


 時間の詰まってるときはお昼も一緒に食べられない。


 でも、寂しくはないの。寂しいけど。


 いつもは校門前で待ち合わせだけど、今日は、お互いに日直の仕事だ。


 苗字が同じだから割とあるんだよ、一緒に日直。クラスは違うけど。


 家事に比べると、軽作業の内の軽作業だ、一樹にとっては御茶の子さいさいだろうね。


 私の方はクラスメイトの女子も一緒に頑張ってくれたので早く終わった。一樹の方は、優がなにもしないかあ今もまだ、きっと日誌でも書いている頃だろう、私の夫は。


 フフ、夫だって。


 家にも帰ってない、校内で、こう思うのは少し照れる。もうすでに決定していて、それなりに時間もたってるって言うのになんか恥ずかしい。


 顔がほころんでゆくのがわかる。とてもだらしのない笑顔。だから隙ばかりある笑顔だ。


 こんな顔、一樹以外に見せられないなあ、なんて思いつつも頬の緩みが止まらない。


 おかしいね。


 毎日会ってるのに、同じ学校で、同じ家に帰るんだけど、それでも、クラスが別って、この僅かな別れの後にまた出会える嬉しさがある。


 一樹、学校で会うと、喜ぶんだよね。すれ違ったり、なんとなく見えたりすると、全量で手を振って来る。


 その顔を見ると私もうれしくなる。


 だって、まだ新婚だし。


 そんなことを考えてると、いつの間にか、軽い駆け足になってる。


 校内は走っちゃダメなのにね。


 いいか。もう下校時間で、他に生徒もいないし。


 ともかく、私は一樹を迎えに行くっていうこの行動はとても気に入っている。


 自分がある。気持ちがある。意識だっておおむね一樹に向かう。


 だから私は待つのが苦手だ。


 私は待つっていう妻でなく、向かうって感じな妻だから。


 あ、3組。


 一樹のクラス。


 扉を開けば、きっと一樹、またパアって明るい顔して私を喜び迎えてくれるはず。


 しかも、今日に限って、一樹の日直のペアは、私の親友、鮫島優だ。


 ガラリと扉を開く。


 来たよ、一樹って満面の笑みな私。


 そして私を見つめる二つの目。


二人の目じゃなくて二つの目。一樹も優もこっち向いてない。ってか、顔の一部が接触して、こっち向けない。


 一樹は右目だけ。


 で、優は左目だけ。


 それが、おんなじくらい大きく見開いてこっち見てる。


 ああ、そっか。


 唇と唇をくっつけてたら、そりゃあ、そんな体制になるよね。


 一樹と優。


 二人でキスしてた。


 あれ?


 これちょっとおかしくない?


 一樹と優が?


 思わず、扉の上についてるクラスの表記を二度見する。


 いや、クラスは関係ないし。他のクラスに一樹いないし。


 あれ?

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