真・パチンカスの魔女

ムタムッタ

魔女、現る

Round 1 ゴト師? 魔術師? パチンカスの魔女

 

 騒音広がる遊技場。


 ある者は銀玉の積まれた大量の箱を従え、ある者は財布の配下を根こそぎ奪われる。ハンドルを握る手が、明日は我が身と力が入る。


『ユニコオォォォォン!』


 隣の台、液晶の中にいる少年が叫ぶ。

 画面いっぱいに、台座のレバーを引けと指示が入り、白い細指が静かに握り──引く。


 刹那、台が震え虹色の輝きを放つ。

 画面には「777」と金色の数字が並び、幸運を祝福していた……


 とまぁ、仰々しく隣のおねーさんが興じているパチンコを実況してみた。


(うわ、確変じゃん……座ってすぐかよぉ)




 事の発端は少し前に遡る。



 ある町の駅前。チェーン店のパチンコ屋はそこで今日も来店した客を絡めとる。俺もその一人である。

 昨日こっぴどく負けたというのに「今日こそ」と根拠のない戦いは出向き、はや2時間。目の前の液晶では、ただただ揃わない数字が何度も並んでいた。


 そろそろやばいな、と財布と相談していたところにその女は現れた。

 正直、真隣に座られるのは好きではない。それは今勝負している台では最大音量で遊技するものがいて鼓膜にダメージがくるからだ。せめて音量は2にしてもらいたい。

 

 と、刺激の少ない香水の主は座るや否や慣れた手つきでパチンコ台の音量を最低まで下げた。


(まぁ、これならいいか)


 よく見ると、ハンドルへ伸びる手は雪のように白く細い。ついでに言えばその腕を覆う布は黒くゆったりした袖口。


(変わった服……ん?)


 目を疑った。

 隣にいるのはステレオタイプな魔法使い。


 黒いローブで全身を覆い、頭にはつばの広いこれまた黒色のとんがり帽子。

 彫刻のような均整の取れた顔立ちから、横顔はEラインが完璧に引かれている。不敵に笑みを浮かべる口元は紅く、白い歯がのぞく。

 帽子の内から垂れる銀髪は艶がかって店内の照明を反射していた。


 どこからどう見てもパチンコ屋には不釣り合いな美女がコスプレしてる。


(変なやつが来ちまったな)


 女はローブの裾から千円札を一枚取り出すと、パチンコ台のサンドへ滑らかに投入。


(え、千円?)


 回転数でも確認するのか?

 自分の台がやかましく騒ぐのも忘れ、コスプレ女を横目で観察継続。


 女は500円分のパチンコ玉を出すと再びローブの裾から何かを取り出す。


 今度は杖だ。30センチほどのソレを左手で握ると、フイッと小さな動作で振るう。


 するとどうだろう、女の動きに合わせて玉がチェッカーに入る。

 直後、台に備え付けられたレバーがブルルッと振動を起こした。



 そう──この時は知らなかった。

 この女……パチンカスの魔女は、パチンコに魔法を使っているのだと。




 ◇



 ぜひ作品フォロー、☆評価してもらえると嬉しいです!!


 よろしくお願いします!!

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る