23. 王家の秘宝と呼ばれるもの

23. 王家の秘宝と呼ばれるもの




 私はあれから魔法装具マジックウェポンを使ってみる。本当にどんな形でも形成できるみたいだ。剣も長さや大きさも変化させられるし、まぁその分魔力の消費も大きいんだけどね。そんな私を見てブレイドさんがまた私にケチをつけてくる。


「お前はオモチャを与えられた子供か?無駄に魔力を消費するなよ。考えればわかるだろう?もし何かあった時どうするんだよ。ったく危機感がねぇな?」


「その時はブレイドさんが戦えばいいのでは?何も私だけが戦うわけじゃないですよね?」


 ムカつく!この人私がやることを絶対に誉めることないよね?私が誉められたのってアティを連れてきた時だけ。それ以外はいつも文句しか言わない。気に入らない!この魔法装具マジックウェポンで成敗してくれようか?


「ダンナいちゃつくなら店の外でやってくれよな?」


「マードックお前も眼鏡をかけろ。見えてないぞ。それよりそろそろ本題に入ってもいいか?」


「本題?」


「あのなエルン。バカみたいにはしゃぎすぎた子供のお前に言っておくがその魔法装具マジックウェポンは本題のついでだ。ついで。勘違いするなよ。」


 うう~っ!また嫌み言ってきた!このおじさん、私でストレス発散してるでしょ!


「そのくらいにしてやれよダンナ。ライゼンバッハの皇女の件、ちゃんと調べておいたからよ。」


「えぇ!?マードックさん?」


「オレは一応こう見えても少しは名の知れた魔法鍛冶屋なんだ。各国からお忍びでオレの武器を買ったり、魔法武器作成の依頼を受けたりしてるんだぜ?そしてライゼンバッハ帝国のお客様も多い。」


 マードックさん。凄く侮れない。まさしく隠れた情報屋さんだ。そうかブレイドさんは昔からの馴染みだからマードックさんにお願いしてたんだ。


 私はブレイドさんの事をチラ見する。過去の栄光も捨てたもんじゃないな。今はただの呑んだくれのおじさんだけど……。


「エルン。お前、今オレに対して失礼な事考えてるな?顔に出てるぞ?あと言っておくが、お前はすぐ顔に出る。バカ正直者だから覚えておけ。」


「正直者?それなら私はいい人じゃないですかブレイドさん!そんな人がそんなこと考えますか?」


 そう言って私は思い切りブレイドさんを睨みつける。またバカにしてきたよこのおじさん!もう嫌い!


「あっはっはっ!言われたなダンナ。まぁダンナ達が仲がいいのはかったから、オレの話を聞いてくれ。まず前提としてライゼンバッハ帝国の第三皇女は存在する。これは間違いない。」


 そうか、依頼がデマである可能性はなくなったということか。その情報が得られるだけでも大きい。


「でだ。なんでライゼンバッハ帝国は今まで存在を隠していたはずなのに、その第三皇女を高額な懸賞金をかけてでも探さないといけないのかと言うとだな、どうやらを探しているらしいんだ」


「王家の秘宝ですか?」


「ああ。その王家の秘宝は王妃から第三皇女に渡される由緒正しき聡明な物らしい。だから帝国側も必死になって探していると言うわけだな。」


 王家の秘宝か。どんなものなんだろう?ん?というかそういう物って第一皇女とかに渡されるのが普通なのでは?なぜ、その第三皇女に渡されたのだろうか……謎だ。


「ああ。それについては今から説明してやるよエルンちゃん」


 え。……私何も言ってませんけど?私って心の声が漏れてるのかな……?それともブレイドさんの言う通り顔に出てたりして……嫌だ!ブレイドさんなんかに言われたことを認めたくない!


「その王家の秘宝は代々『』とも言われているらしい。第三皇女はライゼンバッハ帝国が隠すほどの人物だから、第三皇女が持っているのかもな」


「なるほどな。大体分かった。それでその王家の秘宝って言うのは?」


「ペンダントだ。真ん中に大きなをあしらったものらしい。それでここからが重要な情報なんだ。その王家の秘宝を身に着けた女性を見たという噂が西の山奥の村ゴーバーンで出ている。そしてライゼンバッハ帝国の第一皇子も単身で探していると言う情報もあるな」


 そんな山奥の村にわざわざライゼンバッハ帝国の皇女様が?しかもこのローゼンシャリオに一体何のようなのか……それとももうライゼンバッハ帝国には居場所がないとか?


「まぁ今分かるのはそのくらいだな。あとはダンナたちが決めたらいい。」


「ああ。いつも助かる。お代はここに置いておくぞ」


「いや今回はタダでいいぜ。こんなに楽しそうなダンナを久しぶりに見ることが出来たからな。エルンちゃん、ダンナを頼むな。あとはメンテナンスがてら遊びに来てくれ。ダンナの恥ずかしい過去とか話してやるからよ!」


「ぜひぜひ!毎日でも来ますよ!」 


 私は魔法装具マジックウェポンのお礼をマードックさんに言って店を後にする。やっぱりさっき話のあったゴーバーン村に行くべきだよね?私が歩きながら考えているとブレイドさんが私に言う。


「エルン。もしゴーバーン村に行くつもりなら、お前がミーユを説得しろ。それもリーダーとしての務めだからな。オレとアティは何も出来ん。」


「分かってます!これは私のリーダーとしての務めってことぐらい!」


「お前は本当に口だけは達者だな」


 また嫌みか。懲りないなこのおじさんは。いいでしょう!それなら私にも考えがあります!さっきのマードックさんとの会話聞こえてました。私はブレイドさんにおそらく聞かれたくないことを聞いてみる。


「あのブレイドさん。さんて誰ですか?もしかして彼女ですか?」


「お前……聞こえてたのか。シャーリーは彼女じゃない、『閃光』の元メンバーでオレの仲間だった女だ。」


「え。……だった?」


 私のその言葉に一呼吸おいてブレイドさんは答える。


「……死んだよ。オレのせいでな。」


 えぇ……。やばっ。私……聞いちゃいけないこと聞いちゃったかも。それを見たブレイドさんが私の頭に手を置きながらこう言った。


「だからエルン。お前は絶対死ぬなよ?」


「あっ……ブレイドさん……。」


 ブレイドさんは悲しい顔で微笑みながらそれだけ伝えると私の先をそのまま歩いていく。私はその言葉を聞いて、ブレイドさんが私にそのシャーリーさんを重ねている事が痛いくらいに分かった。


 でもそれと同時に私の事を大事にしてくれていることも分かるのだった……。

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