5. 予感は突然に
5. 予感は突然に
雲一つない青空、天気は快晴。今の私の気分のようにスッキリとしている。私はギルドでブレイドさんと合流し、そのまま目的の魔物グリムドラゴンを狩るためにローゼンシャリオ王国の南にある『竜の寝床』に向かっている。
私の足取りは心なしか軽いような気もしている。ちゃんと王都の武器屋で一応軽くて扱いやすい杖と、腰には接近戦ができるように短めのショートソードを新調しこしらえている。
私はブレイドさんに言われた神格スキルのことを昨日家で考えてたけど、やっぱり私とブレイドさんなら最強になれるんじゃないかと思ってしまう。本当に今まで私を追放したパーティーを追い抜き見返すことができる。そんな自信しかない。
「おいエルン」
「何ですかブレイドさん?」
「……何ニヤニヤしてんださっきから気持ち悪いぞ。」
やばっ。また顔に出てしまっていたみたい。というか女の子に気持ち悪いとかいうのは失礼に値するんですけど。
「それセクハラですよブレイドさん。女の子の容姿について言及するのは!」
「オレはお前みたいなガキに興味はないんだがな?」
「興味あるとかないとかじゃありません!」
本当に失礼な人だ。さっきの発言は撤回しておこう。
「そういえばブレイドさん。グリムドラゴンを倒す方法ってあるんですか?作戦とか聞いてませんけど」
「作戦?ああ……特に決めてなかったな。まぁグリムドラゴンくらいなら作戦なんてなくても問題ないと思うがな。見つけたら奴の首を落とすそれだけだろう?緊張しすぎだぞお前?」
「グリムドラゴンくらいって……あのですね。私はドラゴンと戦ったことないんですよ?作戦くらい決めてくださいよ。」
私は顔を膨らませながらブレイドさんに言う。だって初めてのドラゴン討伐なんだから緊張するに決まっている。仮にもブロンズからシルバーへランクが一気に昇格できる危険な依頼なんだし。もっと私の事をいたわってほしいのだけど。
あれから1時間ほどたったであろうか、道中の魔物を倒しながら竜の寝床のすぐそばまで歩いてきた。まぁ……魔物を倒しているのは全部ブレイドさんなんだけどね。
案の定、私は魔物にとどめを刺すことができないしでも攻撃を受けることはほとんどなかった。そう考えると『
「よし……ここで今日は休憩にしよう。野宿だ」
「えっ野宿!?聞いてないんですけど……」
「言ってないが?何か不都合でもあるのか?」
私は女の子なんだよ!この人、私の事を女の子として見てないよ絶対。野宿するならもっと準備をしてきたのに。ローゼンシャリオ王国から竜の寝床までの距離から考えて確かに野宿という選択肢があることを考えていなかったのは私の落ち度ではあるけどさ。
「とりあえず飯の準備だ。お前何もできなそうだからオレが作ってやる。エルン近くに水辺があったから水を汲んで来い。」
「はーい……」
ちょっと不貞腐れた態度で私は近くの水辺に水を汲みに行く。はぁ……野宿嫌だなぁ……。魔物とかに襲われても倒せないし、特に虫が嫌だ。固い地面に寝るのも嫌だ。そんな文句を自分の中で言ってはみるけど虚しくなるだけだからやめておこう。
そんなネガティブな事を考えていると辺りが騒がしくなって、遠くからすごい鮮やかなピンク色の誰かが走ってこっちに近づいてくる。なんか嫌な予感しかしない。
「あっそこのお姉さん逃げて逃げて!」
「えっ……」
私がその声のほうを見ると、ひとりの女の子が大きなキラービーの大群に追いかけられているのが見える。私も咄嗟にブレイドさんに助けを求めるために走り出す。だって……私は魔物が倒せないし!
「あなたなんでキラービーに襲われてるの!?」
「このエーテルドロップのせいじゃないかな?勝手に巣から持ち出したから。いくらギルドの依頼とはいえ単独で来るんじゃなかったかもしれないね!」
「あなたもギルドの冒険者なの?というか話している場合じゃないよね。まずはあのキラービーを何とかしないと……」
私は一生懸命走る。丁度ブレイドさんがいるあたりまで戻ってこれた。
「ブレイドさん!助けて!」
「ああ?……なにやってんだよお前は!」
そういうとブレイドさんはそのキラービーを軽く一刀両断にする。一匹狩られたそのキラービーの群れは危険を察知したのかその場から戻っていった。助かった。こんなに走ったのはいつ以来だろう。私は息を整えるのに時間がかかる。もっと体力をつけないといけないよね。
「いやぁお姉さんとおじさん助かったよ。」
「おじさんじゃないがな。お前は?」
「私はミーユ。この前ギルド冒険者になったばかりの16歳の女の子です!てへっ」
私とブレイドさんは竜の寝床近くで同じギルド冒険者のミーユに出会った。確かにギルドでは見かけない顔だし本当にまだギルド冒険者になったばかりなんだ。なんか懐かしいな。とかミーユを見て私は思っていた。
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