五日目
目が覚める。僕は決めた。こんな器はもう壊してしまおう。そしたらきっと外に出られる。
自分のでも、他人のでも、器を傷つけることは絶対の禁忌とされていた。明日その体を使うのは別の人だから。でも今となっては関係ない。どうせ僕は、この器が壊れるまでここにいなければいけないんだから。
隣の家の女の子に話しておこうと思った。何も言わないでおいて、僕の器が壊れているのを見かけたらびっくりしてしまうかもしれない。
女の子の家に行ったら、彼女はいなかった。
一番近くにある高い建物の屋上へ行った。
隣の家の女の子がいた。
声をかける間もなく飛び降りてしまった。
べしゃっ。
潰れるような音がした。
僕は少し寂しい気持ちがした。
僕と同じことを考えていたのなら、言ってくれれば良かったのに。
彼女の飛び降りたのと同じ所に立ってみた。
周りの建物を見渡すと、屋上に立つ人影が沢山見えた。
ぱらぱらと飛び降りてゆく。
なんだ。僕の考えは誰にでも思いつくみたいだ。残念だった。
地上を見下ろせば女の子が血塗れで倒れている。頭が割れるのは痛いだろうか?
フォークでめった刺しにされるよりはきっと楽だろう。あれは本当に痛かった。
僕は飛び降りた。
僕らは裸の魂でいい。
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