〈懐かしき赤い島〉

「マダガスカルの話をしよう」と爺医は語り始めた。


 ――約20年前のエピソード記憶。

 JICAの国際協力専門員として、マダガスカルに二か月ほど出張した。


 首都のタナからプロペラ機で赤い大地を北に飛ぶ。


 滞在先はマジュンガという海岸沿いの街。


 マジュンガ大学病院は、モザンビーク海峡をはさんでアフリカ大陸を望む高台にある。

 公用語はマダガスカル語とフランス語であり、教育システムも旧宗主国フランスの影響が非常に強いと感じた。


 産科外来でJICAのシールが貼られたエコー検査機器を見つけたが、あまり使われていないようだ。日本からの善意が勿体ない。

 訳を聞くと、フランス人専門医の奥義として取り扱われているらしい。

「エコー検査は産科医に必須技術です」とフランス人専門医に仁義を切り、マダガスカル人産科医に実技指導した。


 数日後、リーダー格の医師から自宅に招待された。白米を食べるマダガスカルの食習慣や、昔の日本人のような気遣い。マダガスカル人のルーツには諸説あるが、マレー半島からインド洋を渡ってきたアジア系だという説に納得した。


 そののち彼が教授になったことを知り、マダガスカルの周産期医療にチョットだけ貢献できたと自負している。


 今も思い出すのは、赤い島マダガスカルの自然と人情。

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