第3話 二つのチアリーダー部

 その夜


 亜利亜は布団に入り寝ようとしていた。


「ねえ、亜利亜、お金があるのに何で空き地にて雪に埋もれていたの?」

「わたしは寒さには強いので冬でも野宿です」


流石、天女と言うところか……しかし、亜利亜が師匠と呼ばれてから調子が出ないな。野菜ジュースで釣るのも限界があるし。これが俗に言うマウントをとりたいとの現象か。わたしは五分ほど首を傾げる。


 試しに『お手』と言ってみる。


「はい、にゃん」


 亜利亜はわたしの手の上に乗せる。


『なでなで』と言ってわたしは亜利亜の頭を撫でる。

「ゴロにゃーん」


 飼い猫の反応である。しかし、それでも物足りない。


『お賽銭』


「はいはい」


 千円札が何枚か出てくる。


「それ全財産か?」

「はい」


 ふ~亜利亜は極貧であったか。師匠と呼ばれているのだ。これで大富豪なら追い出そうと思っていたところだ。イヤ、お賽銭と言って全財産を取り出すのも問題だな。

 ここはしつけておくか


***


 それは前部長の事故である。高い脚立に乗ってアクロバティックなチアを練習していた時に落下事故を起こし。


 当然、チアリーダー部は活動休止。


 前部長は引退、副部長派と生徒会兼務のグループに分かれてしまい。


 分裂して活動を再開。


 副部長であった。東間のクループが体育館で練習をして、生徒会兼務派は一階のダンスフロワーで活動している。


「それはつまり、どちらかの部活が活動できなくなるのか?」


 東間は目をそらして頷く。


「明日、ダンス対決だ、下りるなら今だ」


 申し訳なさそうに東間が言う。チアと日本舞踊の融合は生徒会兼務グループに勝つ奇策である。


「少し、考えさせて」


 わたしは亜利亜と共に正門の先にあるベンチに座る。


「何故、迷う?」


 亜利亜は不思議そうにわたしに問う。


「ああ、そうだ、たとえ負けても他人事だ」


 ……。


 わたしは沈黙の後で……。


「チアリーダー部の皆は青春をかけている。そう人生が変わるのだ」

「では、東間達に天女の舞を見せよう」

「!!!」

「切り札は最後に取っておくのだ」

「勝てるのか?」

「あぁ」


 わたし達は体育館に向かうのであった。


 そして、亜利亜による天女の舞は、それは綺麗なモノであった。


「この舞にチアの情熱を加えれば最強だ!」


 東間はぼそりと呟くと。それを見ていた部員たちの士気も高まる。


「よし、練習だ」

「はい」


 日は暮れて行き施錠時間が迫る。


「おーい、下校時間だ」


 先生が声をかけてくる。


「時間か……」


 最高のパフォーマンスは休むことも大切だ。


「今日はよく休むように」


 東間部長が帰宅するように言う。


 そして、翌日。


 生徒会兼務チームと副部長派の対決である。時間は放課後。体育館に運動部を集めて。100人規模の盛大な対決となった。


 ルールは簡単、二つのチームのチアを見ていいと思った方に投票する。


 先攻、後攻はコイントスで決めた。この場合後攻の方が有利である。結果は後攻が取れた。


 それから、先攻の生徒会兼務の演技が始まり。


 その後。わたし達の番だ。演技が始まり、一瞬の静寂の後、会場は大盛り上がりであった。


「勝てたか?」

「大丈夫です、歓声が違います」


 そして、投票であった。


 この勝負の審判の新聞部が「勝者、副部長チーム」と発表する。


 勝負が終わり、生徒会兼務チームの部員は抜けて引退する者、大学でチアを続けたいのと一人で続ける者、東間に詫びを入れてこちらの部員になる者と様々であった。そして、リーダーである生徒会長は東間のチームを正式な部活として認めてくれた。


「わたしの方からチアリーダーの大会に推薦するわ」


 それは生徒会長が止まっていたチアの活動を後押しするモノであった。


「それと、そちらの助っ人の天女さんでしたね。実話、副生徒会長が公園で拾った物がるの」


 現れたのは天女の羽衣であった。

あーそれよ、それ」


 天上界に戻る為に必要な物であった。


「ひょっとして、お別れ?」

「うーん、少し考えさせて」


 全てが終わり、決断は亜利亜に任せられた。

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