第47話 ウィーカによる魔剣講座


「さて、魔剣ウィーカとはなんぞや?という所から説明しよう」


 文字が読めないルークを置き去りにウィーカによる講義が始まる。


「魔剣ウィーカとは魔族を守るために神が造りし兵器の事じゃ。そしてその特性は持ち主の魔力を使わずに【特異魔術】を扱えるという点にある」

「得意魔術?」

「ふむ、何やら抑揚に違和感があるのぅ。ちなみに、漢字ではこう書く。意味は周りの者が決して真似できぬ特別な魔術と言う意味じゃ。魔術についての説明は今回省かせてもらう」

「ほぅ……」


 相槌を打ってはいるものの、ルークはまだ理解できていない。


「簡単に言えば、我はいくつかの魔術をこの身に宿しており、それらの術を発動する際に持ち主の魔力は一切使用しないという事じゃな」

「おぉ!」

「じゃがしかし、なにも無尽蔵に魔術を放てるわけではない。我の持つ“八つ”の魔術にはそれぞれ回数制限が設けられておる」

「回数制限?」

「そうじゃ。第一の術・《三途の渡(さんずのわたし)》は一日に十回しか使うことができぬ。第八の術・《大寒獄(だいかんごく)》は十日に一回しか使うことができぬ」

「は?」


 ルークの驚きも当然だ。

 十日に一回という頻度は明らかに少なすぎる。そもそも第一の術でさえ、一日に十回しか使えないのだ。

 気軽に振るえる感じではない。


「それ……もしかして何時になったら回数が復活するとかそういう感じなのか?」

「少し違うのぅ。一度使うとその一回分は既定の時間を過ぎるまで使えなくなるという事じゃ。《大寒獄》であれば、使った日より十日後の同じ時間に再び使えるようになる。《三途の渡》の場合は、一回目から二十四時間経つまでは残り九回しか使えぬ。」

「全部の術の回数がゼロになったらどうすんだ?」

「中々そのような事態には陥らぬがそうなった時のための対策も当然ある」

「それは?」


 ウィーカが黒板を反転させると、魔剣を持った人のような絵が描かれていた。

 ルークにも人から魔剣に向かって矢印が向いている事だけはわかる。


「我に魔力を捧げる事で、指定した術の使用回数を元に戻すことができる」

「魔力無いと意味ねぇ」


 とは言っても、魔力を捧げるだけで回数が復活するのなら実質使い放題みたいなものだ。

 ウィーカの説明を聞けば確かに魔剣ウィーカは魔族が持つべき兵器であることが分かる。


「じゃが、それにもリスクは存在する」

「は?」

「一度我に捧げた魔力は二度と回復せんのじゃ」


 ウィーカの言葉がイマイチ理解できず、横に立っているだけのアカネに目を向ける。


「法力と魔力は似ておりまして、食事や睡眠で回復します。ですが、ウィーカ様に捧げて消費した分の魔力は失われたままになるのです」

「え、マジで?それ……よほど追い詰められてねぇと使えねぇだろ」

「うむ。その通りじゃな」


 なぜか胸を張るウィーカ。

 ルークは改めて魔剣に目を向け、使い勝手の悪い武器だなぁと心の中で呟いた。


「今代の主も聡くてこちらとしては助かるばかりじゃ。では、次に各術の使い方と回数制限などについて話していくぞ」

「お、おぅ……」


 そのままウィーカによる魔剣講義は夕食を挟んで夜まで続いた。

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