第12話

 ミルキーに弾倉を変えて貰う。

 私はこの銃に詳しくない。そして弾丸を持っているのは、ミルキーだ。


「装填完了ニャ!」


 銃を受け取り、銃口をボスサラマンダーに向けた。


 ――パン……キン


「銃撃を弾くのか」


 目玉を狙ったのだが、それでも弾丸を弾いた。魔力に関係してるのかもしれない。

 ダメだな、銃撃では倒せない。

 私は、ライフル銃と斧、戦槌を手放して、銛を握った。


「近づくのですかニャ? 肺が焼けるのニャ! もっと装備を充実させてからでニャいと!」


「銃が効かないなら、近接戦闘だ。大丈夫だ。私は、火山地帯での活動経験がある。肺には自信があるんだ」


「自信持ちすぎニャ!」


 この銛であれば、鱗を貫ける自信がある。

 まあ、この世界に来て初めて手に馴染んだ武器というのもあるが。

 近接戦闘で確実に仕留める。それで終わりにする。


 ジリジリと間合いを詰める。

 ボスサラマンダーは、炎の息を吐き出す準備のようだ。

 互いに、中距離の必殺の間合い……。


 先に動いたのは、サラマンダーだった。

 私の視界を、炎が埋める。サラマンダーの炎の息だ。


「ふん!」


 私は、銛を風車代わりにして、炎を風で遮って行く。

 強風が炎を押し返して行く。

 サラマンダーの炎の息が止まった。


 その間隙をついて、銛を投槍する。

 銛は、ボスサラマンダーの喉を貫いて、先端が背中から突き抜けた。


 だが終わっていなかった。ボスサラマンダーが突進して来たのだ。

 今の私は素手だ。武器がない。

 そしてボスサラマンダーは、触れられない体温を持っている。


「何時もの方法で行くか……」


 私は、落ちている石を握り持ち上げた。1トンほどの大岩だ。

 それを持ち、私もボスサラマンダーに突撃した。

 互いに引かない真正面からの衝突……。私の持つ大岩が割れた。

 武器のない状態での、私の常套戦術。周囲のモノを盾にする。これに勝る武器などない。コスト0でなにを壊してもいいのだから。

 私が唯一全力を出せる戦法でもある。


 前方を見る。ボスサラマンダーは、遠くに弾き飛んでいた。

 まさしく潰れたトカゲと言った感じで、壁に張り付いている。

 私の索敵にも生命の鼓動を感じない。


「終わったかな? 銛は……、ダメそうだな。柄を変えるか」





 私は、『異次元の扉』を破壊した。物理的に破壊が可能だったのが不思議だ。

 私みたいな不幸な目に会う人物は、減って欲しい。

 それが、私がここに来た理由だった。


 ミルキーは、サラマンダーの素材を回収してくれていた。


「私の索敵には、もうなにもないな……。陽も高いしもう少し狩りたい場面だ」


 欲をかき過ぎかもしれないが、物足りないというのもある。


「もう少しで、回収が終わるので待って欲しいニャ。そうしたら、帰りましょうかニャ」


 私は頷いた。

 しかし、ここで異変に気が付く。


「何だ? 地面が揺れている?」


 次の瞬間に、地面が割れた。

 その亀裂から、炎が噴出する。





 走る! 走る! 走る!


「噴石が来ますニャ! 右に二歩移動!」


 私はミルキーを背負って全速力で走った。

 索敵はミルキーに任す。上空後方から来る噴石を索敵しながらの移動となると、多少厳しい。まあ、後ろ歩きという方法もあるが。


 途中で出会う、雑魚の魔物もミルキーの吹き矢に任せる。

 とにかく身体能力を最大限に強化して、火山帯を抜けることだけを考えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る