2.身だしなみ

「メイクなおしてきますね」

 彼女は出ていった。


 聞いていた以上にかわいくてドキドキしてしまった。

 それに――

(あのドレスはダメだって)

 セクシーすぎる。

 桜木さんのイメージというよりは、共通の友人のイメージのほうがしっくりくる。

 このレストランも友人の進藤がおすすめしてきたものだ。

 どうやら進藤は僕らがお似合いだから早くカップルになってほしいらしい。


(女って服の貸し借りするもんだろうか。魅力的すぎる)


 桜木さんも自覚はしているからストールを巻いているのだろうが、後ろのデザインが隠れ切れていない。

 顔を抑える。

(好み過ぎるんだよ!! 明日仕事手につくかな……)


 自分で言うのはうぬぼれているのはわかるが、男性の中ではモテるほうだ。


 けれど俺に告白してくるのは我が強くて自分に自信がある過ぎる女性ばかり。

可憐な人とは縁がなく、持とうとするとメイクの濃い女性が邪魔をしてくるのだ。


偏見だと思いたいが3回続けば辟易するものだ。


 紹介してくれといったこともおあるが、仲介相手が嫉妬してか、

 どこかで話がこじれてうまくいかない。


 男性の嫉妬もめんどくさいが、女性の嫉妬は陰湿だなと感じた出来事もあった。


(どっちにしろ、嫉妬ってめんどくさいな)


 ぼんやりとしていると桜木さんが戻ってきた。

 泣いていたであろうアイラインやチークが元に戻っている。


(もっと彼女のことを知りたいな)

「食事が来ました」

「食べましょう」


 彼女の笑顔がかわいらしく、もっと一緒にいたいと思う。

「おいしいですね」

 手先も器用らしく、この店のコンセプトに合わせてゆったりとスプーンやナイフを丁寧に扱い、まったくと言っていいほどに音を立てない。


「マナーがよろしいんですね。

こんなにきれいに食べられる人はなかなかいないかと」


「そうでしょうか? いっぱいいますよ。

 親からマナーは大切だといわれていて、

場にあった立ち振る舞いをするようにと」



「ええ、素敵なことです」


 話のネタは共通の友人である進藤杏奈のことになる。

 引き合わせてくれた共通の友人だ。


「杏奈にはずいぶん慰めてもらって、感謝してます」

 入社したての頃、成績が悪くて、ミスも多くて本当にやめたかった。


 愚痴を聞いてもらったり、慰めてもらったりした。


 彼は進藤についてこう語った。


「俺の親友の彼女が進藤なんですよ。ああ、もう奥さんか」

「そうだったんですね」


 お互いの家族のことや尊敬できるところを話して

 ディナータイムを堪能したのだった。

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