第6夜 スラム街から見る夜空

空の美しさという場合、

大抵広々とした空、晴やかな空などという。


中央街の外れのスラムに住まい私は

更に種類の異う空の美があることを知った。


それは、大都会の上の夜空――

大都会のペーヴメントに立って仰ぐ空の美しさだ。


空はそこでは、ただ、のん気に広々としてはいない。


ひたすらに高い建物、

猥雑さの残る広告塔、

盗聴用のアンテナ、

其等の錯綜した線に切断され、

三角の空、歪んだ六角の空、

悲しい布の切端のような空がある。


哨戒光が夜空を照らし、

星々は隠れる。


しかし何故だろうか、

全てを寛容する夜空に見られている錯覚に私は陥る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る