第3夜 宗教性培養肉

白亜の神聖な神殿にて、男が隣の人にコソコソと話を持ちかける。


「ラムゼイ、俺たちがこの胎児祭で食べてるこのドロドロしたやつは一体なんなんんだ。何だか不気味じゃないか?」


隣の人は、嫌な顔をしてこちらを向く。


「ここでそんな話振るなよ。無神論者だと思われたら面倒くさいことになるぞ」


無神論者は即処刑。アムベナスク地区での言わずもがな常識だ。


「大丈夫だろう。司祭達は全員儀式に集中している。それに俺たちは神を信じているじゃないか。こうやって集会に欠かさず出席してるしな」


「なら良いのか?」

「勿論。それじゃあこの肉の正体を教えてくれ。気になってしょうがないんだ」


「分かった...何でも聖職者の肉体らしい」

話を持ちかけてきた男は顔色を変える


「え...なんだって...それは俺らが食べても良いのか?」

そんな貴重なものを食べていることに驚き、男は動揺する。


「司祭の意志なのだから許されるだろ」

「そうなのか……」

「そうだ」

二人は食事を再開する。

しかし、先程までの味とは少し変わっていた気がした。


「…………」

「…………」



「…………いやダメだ!俺は食べるのをやめる!」

男は決心をしたように宣言をする。


「どうしてだ?せっかく食べられるチャンスなのに」

「だってさっきの話を聞く限りだとこれを食べると頭がおかしくなるんだろう?だったら絶対に食べない方がいい」

「まぁ、そうかもしれないけど……でも食べたら何かあるかもしれないぜ」

「いいや。きっと何か良くないことが起こるに違いない。例えば脳みそが無くなって廃人になるとか」

「そこまでいくかな?」

「分からないが用心しておくべきだ。それにこのドロドロしたものにはどう考えても何らかの毒が含まれていると思う」

「それもそうか……」

「だから止めよう。これはお前のために言っているんだ」

「分かった。もう二度とこんなことはしない」


男達は諦めたようで、その肉を食べるのを止めることにしたようだ。

しかしその時である。突然、祭壇の上にいる一人の女性が悲鳴を上げる。


「キャーッ!!!!!」

「うわっ!?なんだ!!」

「どうしたんだ!?」

周りにいた人達がざわめき出す。そして、祭壇の上を見ると、そこには先程までいなかったはずの女性がいた。その女性は黒いドレスに身を包み、真っ赤な口紅をつけていて、髪の色は黒かった。彼女はまるで幽霊のようにそこに存在していたのだ。


「おい!!誰だよあの女は!?」

「知るわけないだろう!」

「いつの間にいたんだよ!?」

周りの人が騒ぎ始める中、壇上の女性はゆっくりと立ち上がり、口を開く。


「皆様こんにちは。私は今宵、この子達を産んでくれる母胎となるべくここに参りました」

「どういうことだ!?」

「説明しろ!!」

人々が一斉に叫ぶ。すると今度は司祭達が慌てふためく。


「ああ……なんて事だ……まさかここまで来るとは……」

一人の司祭が叫ぶ。彼女は我々が待ち望んでいた救世主だ。

ざわめき。人々は語る、彼女の存在について。


「あいつは何者なんだ?」

「分からない……だがこのタイミングで現れたということは……おそらく彼女こそが我々の求めていた救い主に違いない」

「救い主?どういう意味だ?」

「そのままの意味だ。彼女が神によって遣わされた天使であることに変わりはない」


「もうすぐ新しい命が生まれるのです!この世に生まれるために、母体の中から外に出るために今まさに生まれようとしているのです!!」

「それでは皆さん、お祈りを捧げましょう。」

「さぁ!皆様もご一緒に!」

「「神と聖母様に栄光あれ!!我らに祝福を!!!」」

「神と聖母様に栄光あれ!!」

「「神と聖母様に栄光あれ!!」」

「神と聖母様に栄光あれ!!」

「「神と聖母様に栄光あれ!!」」


彼女の蠱惑魔な声に従い、大衆と俺らは叫びながら流動的な肉を食らう。

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