第23話『トネリコの森』

 ワイン祭りで襲撃を受けたサシャたちはそのままレイン家があるアッシュ領へ向かった。

見知らぬカラスの騎士フラターに抱えられた屋敷の主人アッシュ伯爵イザベルと、ジェミニを従えた次期後継者のマシュー、もう一人のカラスの騎士アミーカに抱えられたオレンジ髪の少女が帰ってくると、屋敷の者たちは驚き主人たちのためにあらゆるものを用意した。


「イズン、大丈夫?」

 レイン家当主の私室。フラターとアミーカが心配そうにのぞき込むとイザベル・レインはやや疲れた顔で微笑んだ。

「大丈夫ですよ。守ってくれてありがとう」

 イザベルに撫でられるとカラスたちは嬉しそうに尾羽を立ち上げた。しかし騎士は次の瞬間には真顔になり、隣の部屋へ案内された主人の元へ向かう。

 イザベルは自分に懐いたカラスの騎士たちが気になり、そっと隣の部屋へ続く扉から様子をうかがう。

 客室に案内されたサシャの前で太陽神の杖たちは片膝をついた。少女は上質なソファに腰を下ろした状態で二人を見下ろす。

「マシューのお母様のご様子は?」

「ちょっと元気ないけど大丈夫そう」

「そう、よかった」

 サシャは背後にある隣室への扉ではなく、壁を見やってイザベルを気にする。

「アッシュ伯爵は体質の問題で使い魔がいらっしゃらないそうだから、あまりベタベタ甘えちゃダメよ」

「えー」

「全くすぐ懐いちゃって、珍しい」

「イズンは俺たちに優しかったからな」

「今は違うご婦人よ。同じ感覚で甘えてはダメ。初対面なんだから」

「むぅ」

 サシャはふぅと溜め息をつくと瞳を金色に輝かせて腰を上げた。

「狙われたのは間違いなくわたくしね」

「あの精霊もどきも似てたが別の奴だった」

「そうね、オリヴィエではなかったわ。あの子の魂はもっと柔らかかったもの。あんなスカスカのカサカサじゃないわ」


 太陽神ソルが部屋の中を歩いて考えごとをしていると、ノック音がしてマシューが顔を出す。マシューは金の瞳のサシャを見て目を見張り、己も瞳を銀色に輝かせながらジェミニを連れて部屋へ入った。

「だいぶ長く維持できるようになった? その状態」

「ええ、それなりに」

「いま報告待ち。君のほうにもつかいが来るでしょう」

「そうね、待つわ」

 マシューは主人の横で膝をつく二羽のカラスへ微笑みかけた。

「自分の母親が別の女神の生まれ変わりだとは思わなかったよ」

「意識は芽生えてるのに気付かないもんなんだな」

「顔を見慣れてるせいかもしれないね。別の視点で見ないと分からなかったんだろう」

 イザベルはそこまで見聞きしてそっと扉を閉め、一つ息をつくと部屋を出ていった。


 サシャとマシューたちはイザベルが離れていったのを音で確認し、お互いの顔を見た。

「早く犯人を捕まえないと。市民を巻き込んでしまったわ」

「それもあるけど、君は自分の命が狙われてるってのに落ち着きすぎだよ」

「太古じゃこんなこと日常茶飯事だったもの」

「あのね、今は平和な時代だからね?」

 マシューは息をつくと銀の瞳から普段の白銀へ色を戻した。

「さて、じゃあ状況が落ち着くまではうちでくつろいでいって」

 太陽神ソル、もといサシャはその言葉を聞くと瞳の色をオレンジへ戻してぱっと頬を赤く染めた。

「そうだ、ここマシューのおうちじゃん!」

マシューは柔らかく微笑みながら、サシャの表情を観察する。

(自己催眠と表層意識が地続きになってきたかな? 記憶が飛ばなくなったみたい。ま、状況把握には丁度いいね)

 アミーカとフラターはジェミニの顔を見る。

「こいつんってことはお前の部屋もあるのか?」

「ああ、もちろん」

「見たーい」

「こっちだ」

「本当に使い魔に一部屋当てがってんのかよ。余裕あるな」


 カラスたちは三階にあると言う白フクロウの部屋へ。

 鳥カゴと言うには至って普通の室内。柔らかい丸いベッドもあり、本棚もあり、人の大きさのまま飛び立てそうな窓もある。暖炉も小さいながら備え付けられ、炭がくすぶっていた。

「本当にだな」

 フラターが室内を見渡しているとアミーカはおもむろにジェミニが使っているベッドへ顔をうずめた。

「おーい相棒!」

「ここで寝たい」

「お好きに!!」

フラターは顔を赤くしているジェミニの横で呆れた。




 カラスたちが上階へ上がる姿を見送ったサシャはマシューの案内で本人の部屋を訪れた。

 藍色や灰色を多く使った調度品の中に、差し色の金色がきらりと光る。星空のような部屋だ、とサシャは思った。

「軽くお茶飲む? 今頃母さんが用意してくれてると思うんだけど」

「え、うーん……。いや、伯爵様のご用意を待つよ」

「そう? ああ、俺着替えてくるね」

「あ、うん」

 マシューは隣室へ続く扉へと消えていった。

 残されたサシャは夜空色のソファへ腰を下ろす。何気なく見上げた天井。そこに散らばった金色の粒が実際の星を表していることに気付き、サシャはおおと声を出した。


「あー、もう。サシャさん」

 水色の薄いシャツに着替えたマシューは、背もたれに頭をあずけて星座を読んでいる少女を見て呆れた。

「髪型崩れるよ」

「すごーいこれ本物の星空だ。春の空?」

「正解。よくわかったね。地元でよくながめてた?」

「うちの近所、夜は月明かりくらいしかないからさ」

「なるほどね。ほらほら、頭起こして。髪直すから」

 マシューはソファに腰を下ろすと、背中を向けたサシャのお団子を解いて慣れた手つきで髪を整えていく。

「あれ、マシュー男の子なのにこう言うこと出来るの?」

「幼馴染に双子の女の子がいると嫌でも必要になるよ」

「あー、二人の身支度手伝ったり?」

「そうそう。周りが月の姫ばっかりだし、小さい時は妹扱いされてたよ。まあ今もそうなんだけどさ……」

 マシューはサシャが使っていたヘアピンとヘアゴムだけを使い、三つ編みでまとめ上げうなじがすっきりした髪型へ変えた。

 鏡で髪型を確認したサシャは再びおお、とつぶやく。

「ありがとう。マシュー器用〜」

「どういたしまして」

 スカートのすそを持って身を左右に振っていたサシャは、ふと視線を感じてマシューへ振り向いた。月が微笑み、少女は顔を赤らめる。

「そんなに可愛い顔すると、スコルになって食べちゃうよ」

「い、いじわる」

 マシューは立ち上がってサシャのそばへ歩み寄る。少年の滑らかで長い指が横顔にかかるオレンジ色の髪に触れ、少女の体温はさらに上がった。

「ま、マシュー近いよ」

「このくらいの距離はいつもじゃない?」

 サシャが赤い顔で見上げると、マシューは微笑んでいた。いつもと違って見えるのは瞳がうるんでいるからなのか、少女と同じように頬が赤いからなのか。

 マシューの顔が近付いて、サシャはきゅっと目をつむった。ほんのちょっとの間のあと、少年の薄い唇が少女の口の端に触れる。

 サシャは焦らされるのが嫌で、マシューのえりを掴んで自分のほうへ引き寄せた。

「サシャさん、大胆」

 マシューが笑って息が顔にかかる。サシャは彼の頬に指で触れて、軽く触れるだけのキスを数回した。

 少女は顔の温度がもっと上がるのを感じながら、少年から顔をそむけた。

「わ、私もジェミニの部屋気になる! 行っていいかな!?」

 マシューは少女の後ろでゆるむ頬を気にしながら、部屋を出ていく恋人のあとを追いかけた。




 火照ほてる顔を振り払いジェミニの部屋へ訪れたサシャは、アミーカとフラターのくつろぎっぷりを見て呆れを通り越し感心した。アミーカはジェミニのベッドで本人を前にうたた寝をしているし、フラターはジェミニが持つ本を片っ端から読み漁っていた。

「自分の家みたいにくつろぐわね」

「この本おもしれー」

「それ図鑑よ?」

「図鑑初めて読んだ」

「図鑑が好きなんて面白い子ね」

 サシャがフン、と腰に手を当てるとアミーカが寝ぼけ眼で首を持ち上げる。

「精霊騎士用のベッドって寝やすいのな」

「それ専用なの? いいわねぇ」

(いくらだろ。買ってあげられるかな?)

アミーカはまた脱力し、ベッドにボフリと顔をうずめてしまう。

 サシャより後から部屋へ入ってきたマシューはニコニコと微笑む。

「アミーカの分も買ってあげるよ。二人の部屋も用意するし」

「マシュー、外堀から埋めていくのやめて」

「サシャさんは部屋どこにする?」

にこやかなマシューを見てサシャはお手上げ、と腕を広げる。

「一番小さい部屋でいい。市民的にはこの部屋よりずっと小さいくらいで丁度いいの」

「ここより小さい部屋? うーん、あったかな……」

「ああもう、どの部屋も広いのね……」

 丁度よいタイミングで少女と少年、その騎士たちの元へ屋敷のフットマンがやって来て声をかける。

「お茶のご用意が出来ました」

「ああ、ありがとう。行こうかサシャさん」

「うん。フラターたちも来る?」

「オレもうちょっとこれ読みたい。相棒寝てるし」

「ん、わかった」




 庭園をのぞむ屋外テラス。緑豊かなテラスは庭師の細やかな気遣いが行き届いている。お茶が一式用意されている広めのティーテーブルでは当主イザベルが待っていた。

「準備が遅れてごめんなさいね」

「いいえ! ゆっくり出来たので丁度良かったです」

 サシャがイザベルに気を遣い、マシューと共に席へ座ると、庭園に住んでいる花の妖精フェアリーが飛んできてスイッとサシャの肩へとまった。

「あらお隣さん」

「初めまして私たちの花嫁!」

「初めまして。お庭に住んでるの?」

「そうよ! イザベルに咲かせてもらったの」

「あらまあ素敵」

 サシャがそのままカップを持ち上げると、驚いた顔のマシューとイザベルと目が合った。

「サシャさん、精霊が肩にとまってもごく自然に受け入れるんだね」

「ん? うん、普通のことだし……」

「……なるほど、本当の本当に普段からそう言う感じなんだ」

 マシューたちがお茶を飲み進める間にフェアリーたちはどんどん集まる。サシャはいつも通り自分が食べるクッキーを割って、フェアリーたちへ差し出す。

「あーん!」

フェアリーも人であるサシャの手から警戒心なくクッキーをもらう。

 イザベルとマシューは目の前の光景を信じられずにいた。

「す、すごく懐いているわね……」

「予想はしてたけどこれほどとは……」

「神の花嫁ならみんなそうだと思ってたんだけど、その様子だと違うみたいね」

「さすがに手から直接クッキーは食べないかな……」

 サシャたちの話し声にかぶるように、ジェミニの部屋の窓から笑い声が聞こえる。直接は見えないが、アミーカとフラターがジェミニとゲームを始めたことは察せた。

「ほんと、自分の家みたいにくつろいじゃって」

サシャが微笑むとイザベルは切ない顔を見せる。

「この屋敷で笑い声が聞こえるのはいつぶりかしら」

サシャがきょとんとしてマシューを見ると、少年は肩をすくめた。

「実は俺、妹がいるはずだったんだけど」

「えっ」

「一つ年下のね。その子と父と立て続けに儚くなってしまったものだから、母さんが明けてなかったんだ」

「え、ええ……」

そんな悲しいことが、とサシャが顔を向けるとイザベルは困ったような笑顔を見せた。

「もう何年も引きずってしまって」

「それはでも、それだけ悲しみが深かったからですし……」

「いつまでも落ち込んでたら駄目だと思って、今朝ヴェールを取ったの。丁度よかったわ。貴女とカラスにもお会いできたし」

 イザベルは白月のように微笑む。サシャはこの屋敷であった大きな悲しみを知り、胸がギュッと締め付けられる。

 するとその気持ちを察知したアミーカとフラターがサシャの影の中へ戻ってきた。

「どうした」

「ん? ああ、ううん。大丈夫」

 サシャがクッキー食べる? とつまんで差し出すとアミーカとフラターは外へ出てきて主人の手から直接菓子を口にする。

「うむえ」

「美味しいわよねこのクッキー」

「これ全部母さんの手作りだよ」

「え!? お店のかと思っちゃった! すごい。プロ並み」

マシューはそれを聞いて嬉しそうに微笑む。

「ティアラ姉妹も好きなんだ、母さんのクッキー。ほんと上手なのに、大したことないって謙遜けんそんするんだよ」

「美味しいですよ、本当に!」

「そ、そうかしら?」

「美味しいでしょ?」

「美味い」

「ほんと店開ける」

「フラターはともかくアミーカが褒めるの珍しいんです。いつも素直じゃなくて」

 アミーカもフラターも相当味が気に入ったのか主人の横で口を開けて次のクッキーを待つ。餌を待つ雛鳥みたい、と思いながらサシャは騎士の口へクッキーを追加する。

「まあまあ、可愛らしいこと」

「ほんと珍しい」

 アミーカはクッキーを咀嚼そしゃくするとジェミニの部屋のほうを見上げた。

「あいつも食うかな?」

「呼ぼうか?」

 マシューが呼び出すとジェミニはラフなシャツ姿になっていた。

「ジェミニも母さんのクッキー食べる?」

「いただいてよろしゅうございますか? 是非」

 ジェミニも加わるとカラスたちは白フクロウを間に挟んでテラスの床でくつろぐ。

「床に座るの? 椅子は?」

「椅子に精霊座らせようとするの主人マスターくらいだって」

「だって人の姿してるのに」

「その理屈だと椅子がいくつあっても足りないよ、サシャさん」

「そう言うものかなぁ……」

(おしゃれな喫茶店でスパゲッティを食べた時驚かれたの、椅子に座らせたのもあるのかな?)

サシャはフェアリーたちにも騎士たちにも己のクッキーを配る。

「サシャさんそれ、自分が食べる分なくなっちゃうよ?」

「え? 半分は食べてるし……。あ、あんまり印象よくないかな?」

「いや、そんなことはないけど」

 満足したフェアリーたちは好き勝手に飛んでいってしまう。フェアリーたちがそばからいなくなってもサシャは平然とお茶を続ける。

「アミーカたちクッキーは?」

「もういい」

「満足した? そう」

 魔法使いなら精霊には見返りを求める。こちらが働きかけただけ働いてくれと。しかしサシャは精霊に見返りを求めない。ただ隣人としてあり、生活の一部としている。

 そして少女は精霊たちが満足したなら満足、と微笑みお茶の続きを口にする。

 主人の微笑みを見てカラスたちはうたう。

「我ら精霊の恋人」

「神々の花嫁」

「なぁに? 突然」


 サシャがふっと微笑んだ時、屋敷の門から走ってきたフットマンがサッとアッシュ伯爵イザベルの前で頭を下げた。

「月花騎士団と太陽騎士団を名乗る者が二名ずつ、いらっしゃいました」

「お通しして」




 月花騎士団の片方は魔法薬学の教師リー・イン、太陽騎士団の片方は月寮の清掃員だったため、サシャとマシューは本物だから大丈夫とイザベルへ伝えた。

「そう。ならそれぞれと話を?」

「どうしようか? 母さんの目の前で報告する? 母も被害者ではあるよ」

「は。我らそれぞれの主人と関係者の方へお伝えできればと」

「ならまずアッシュ伯爵へ報告を」

 場所がレイン家であるため、月花騎士団のリー・インが代表として口を開く。

「狙われたのはサシャ・バレット様でございます。襲った者は目撃された容姿と残された魔力痕跡から、ラウレンツ・ブラックウッドが作った人工精霊と判明しました」

 ラウレンツの名を聞いたサシャとマシューは誰だろう? と首をかしげる。

「ブラックウッド家から絶縁された息子の一人。次男だったわね」

同年代なのか貴族界では馴染みの名前なのか、イザベルは渋い顔をする。

「でも二年前に亡くなったと聞いたけれど?」

「死をいつわった可能性が」

「そう……。他に報告は?」

「は。それぞれの主人へいくつか……」

「わかりました。では……」

イザベルはマシューとサシャの顔をチラッと見る。

「俺は自分の部屋で報告を聞きます。サシャさんは客室で」

「ではそうして」


 サシャはしもべとカラスたちを連れて客室へ戻った。少女は自己催眠をやりかけて、途中でとめる。

「……まあ、もう何となく分かってるんだけどね」

己が太陽神の生まれ変わりだとは予想だにしなかった。もはや腹をくくるしかない状況。太陽の娘は息をついて己の騎士たちへ向き合った。

「報告を」

「は。主人あるじを狙った男はラウレンツ・ブラックウッド。人工精霊の開発による功績により一時期評価された者ですが、その後人体実験の容疑で実刑判決が出ておりました。二年前、服役中に死亡したことになっております」

「死んだのではなく実際は脱獄だったってことね」

「その可能性が高いかと」

「その人工精霊って?」

 サシャの問いにカラスたちが答える。

「人間の手で精霊を生み出すこと自体は悪いことじゃない」

花の精霊フェアリーは神の花嫁に微笑まれ生まれる」

「そうね。私も地元ではしょっちゅう誕生に居合わせたわ」

「問題なのは元ある魂を歪めて生む方法」

「たとえば、動物を苦しめて精霊を生み出す呪い」

「たとえば、魂を千切って生み出す欠けた者」

あまりに恐ろしい方法を聞きサシャはゾッとした。

「自然に昇華されるからこそ尊いのに」

「ラウレンツにはその感覚がないんだろうな」

「そう。なら相容れないわね」

 サシャがカラスたちから騎士たちへ意識を向けると、太陽のしもべは再び口を開く。

「目撃された人工精霊はラウレンツと容姿が酷似しておりました。おそらく己の魂と体の一部を使って作った精霊かと」

「オリヴィエと言う名の精霊とも姿が似てたわ。なら、あの子もラウレンツが作った精霊?」

「可能性としては大いにあります。引き続き調査をいたしますので、詳しくお聞きしても?」

 サシャはオリヴィエに初めて会った時のこととダイヤモンドを贈られたくだりを騎士たちへ話した。


「それからこれは……お伝えせねばならないことですが、何とも気が重く」

 サシャは首をかしげてから太陽の騎士へ続きをうながした。

「大会場にて主人あるじをお見かけしたさる尊いお方が、騎士を二体つけているのは珍しいとその場で手紙をしたためまして……」

受け取った白い封筒には名はなく、王家に連なる紋章が封蝋ふうろうが刻まれていた。

「うわ、嫌な予感」

 手紙に目を通したサシャは大きな溜め息をついた。入試の頃から想像していた、嫌なタイプの貴族の男。

“君のような珍しい女性は我が妻にこそふさわしい。婚約しよう”

「だから、こう言う奴が嫌いなのよ」

 二羽のカラスは手紙の主を冷たい目でさげすみ、サシャから手紙を渡された太陽のしもべたちは渋い顔をした。

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