シャドー・エスケープ

主道 学

第1話 プロローグ

 この世には、良い影と悪い影がある。影といっても誰しもがもっている。そう、憑りついているんだ。ほら、あんたの後ろにある奴だ。


 そいつが突然ナイフを振り回して本体を傷つけてきたら、どうなるだろう?

 本体はたちまち血を吹いて倒れるだろう。


 これはそんな影のお話さ。




 俺は幼い頃からおじいちゃんとおばあちゃんと暮らしていた。両親はいない。物心ついた時にはすでにいなかったんだ。今でもおばあちゃんの言葉が俺を恐怖させた。「


 あんたの両親は……二人とも影に殺されたんだよ。




「影洋ちゃん。あんたも影が二つもあるんだねえ。あんたも親と同じなんだなあ」

「……うん。二人はとっても仲が悪いんだよ」


 だけど、いつだったか? 薄目を開けて布団で寝ていた時に、俺の耳に聞こえた襖越しの声は、子供だった俺には生まれて初めて恐怖以外の気持ちが湧きあがった。そう、面白がったんだ。


「ああでもねえ。いつか影同士で殺し合いをしないかあたしゃ心配だよ。もしも、良い影が殺されたりしたら……」

「ああ、そうだけどもなんとかなるだよ。確かー、どこかの山には影斬りの刃があるって噂があるんだよ……」

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