5 騎士ブランカ

一翌日


 宿を出てトレスの店に向かおうとした俺達を引き留めたのは、俺の大嫌いなあいつらだ

った。


「貴様がウノ・ムニョス・サルビンだな?」


 犬の獣人カニッシュ族の偉丈夫が俺とドスの前に立ちふさがる。 周りにいる仲間も含め、そいつらは白銀のプレートメイルに身を包んでいる。そう、昨日見た騎士団の奴らだった。


「へいへい、その通りあっしがサルビンでござんすよ。 騎士サマが俺みたいなしがない平民に何の用でござんすかねぇ?」


 と、尊大な態度の犬野郎に嫌味ったらしく質問を返した。


「貴様!」


 この程度で犬野郎は怒りにマズルを震わせてやがる。


「やめろ、クァトロ!……部下が失礼した。 サルビン殿」


と、俺と犬の間に割って入ったのは騎士団長のレイ・ブランカだった。


「……殿はやめてください。ブランカ卿」


 レイはこの犬に比べて人間ができてるようだ。


「そうか。ならばウノと呼ばさせてもらおう。ウノ、君がドラガナルを攻略し、伝説の魔剣『ヌル・アハト』 を持ち帰ったというのは本当か?」


 な、何で騎士団の奴らがその話を知ってやがる!?


「ウノさん、あの後酔っぱらって酒場の人たちみんなに自慢してましたもんねぇ」


 ああ、そういう事かとドスの言葉で知る。


「単なる噂話であれば結構なのだが、君は冒険者ギルドのランクでもAという腕利きだろう。ならばドラガナル攻略もあり得る話なのでな」


 レイは貴族でありながら、冒険者事情にも精通してやがるのか。どこまでも抜け目ない男だ。


「隠しても碌な目には合わんぞ」


 と、犬のクァトロが凄む。ここは正直に言った方が身のためか。


「ええ。 魔剣は俺が手に入れました。 しかし錆だらけだったので鍛冶屋の親父に預けて鍛え直してもらってる所です。……というか、なぜ騎士団が魔剣の事を?」


 俺の問いに、レイは軽く咳ばらいをした。


「ドラガナルを始めとするダンジョンは我がヘスパニョラ王国が管理し、観光地として開放する形を取っている。なので、ダンジョン内の財宝も王国が所有権を有するのだ」


 管理だと?ただ領内にダンジョンがあるというだけだろう。


「何だそりゃ!俺達が死にそうな目に遭いながら取ってきた物を横取りするのか!?今までダンジョンに潜った事もなさそうなお坊ちゃん達がよ!」


 やつらのふざけた言い分に、俺はつい口が悪くなった。クァトロ以外の騎士達も俺を睨みつける。


「落ち着きたまえ。君の言い分もよくわかる。 その魔剣は我々も国王陛下ですらもその存在に半信半疑だったのだ。実在すると知った以上、それが他国の手に渡るのは避けたい。なので見つけ出した者に国王陛下自ら褒賞を出そうというお考えなのだ」


 なるほど。タダではないという事か。相手はそこらの金持ちではなく一国の主だ。相当な見返りを期待できるだろう。


「解ったよ。今からその鍛冶屋に行くところだから付いてきな」


 レイたち騎士団の6人は俺とドスに続いてトレスの店まで同行する事となった。

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