第13話 ミッションクリア

 シルヴァリオンがぽいっと投げて寄越したのは、蒼い宝石が取り付けられた小型のバックラーであった。

 ラナが装備するとその意思に反応しバックラーのような小型盾から中型のカイトシールドへと変形し、さらにはドラゴンの紋章が描かれたタワーシールドへと姿を変える。


「すごい! でっかくなっちゃった!」


「竜の力が宿るドラゴニックガードじゃ。形状を何種類かに思うだけで変形させることができ、ブレス系をかなり抑える効果があるはずじゃ」


「やったーー! ありがとうシルヴァリオン様あああああ!」

「あ、ありがとうございます」


 がしっと二人へ抱き着いたシルヴァリオンは力強く肩を掴み礼を言った。


「我は他のドラゴンとは違い、人間が好きなのだ。あのときの屑みたいな人間もいるが、お主らのような気持ちの良い奴に合えたりもするでな」


 気持ちの良いって……俺はほど遠い存在だと思うけど――


「カゲミツ。わが友よ、そなたが困ったことがあれば我を呼ぶがよい」


 友か。なんだか変なことになってしまったけど街とこんな美しい竜……美少女を助けられたなら多少がんばったかいがあったかも。


「これから少しばかりぐっすり眠ってから再び動き出そうと思う。ではさらばだ若き英雄たちよ」


 すっと魔法により転移を始めたその強大さに驚くばかりだ。


 ラナはしばらくの間手を振り続けていた。


 なんだろう、この奇妙な達成感は。


 なんとなく左手に篭手を装備すると、異常なまでにしっくりと来る装備感。


 < 特別ミッションクリアにより、レベルが上がりました > お?


 レベルが18に上がりました。


 ステータス向上、さらに竜の盟約を得たことにより影形術の転写対象が大幅に拡大しました。


 影魔法 ナイトメアを習得


 お、新魔法!


 影魔法ナイトメア:その人物にとって二度と見たくないと思われる黒歴史を再現し精神的ダメージを与える魔法。使い手の陰湿さが際立つ卑劣な魔法……ほっとけ


 だが面白い魔法ではあるね。



「あれ? 私もレベルが上がったよ? なんだかカゲミツ様といるとすっごくレベルが上がるのが早い気がするの」



 どれどれ、スペックをチェックしてみよう。




 名前:暗沢影光

 年齢:18歳


 クラス: 陰キャ 


 レベル:19


 <ステータス>


 筋力:9

 耐久:6

 知力:20

 器用:19

 敏捷:18

 魔力:16

 コミュ力:2


 <スキル・魔法>


 影同化  Lv3

 影魔法  Lv4 シャドウマスク、シャドウスネア、ナイトメア

 鑑定   Lv5

 経験補正 Lv7

 影形術  Lv5



 <固有スキル>

 固有結界 トイレ

 遮断結界 Lv1

 <パッシブスキル>

 反骨精神

 びびり

 竜の盟約

 <耐性>

 おもらし耐性+1



 なるほど、そうなると経験補正が影響してそうだな。


 <経験補正について、陰キャはオタク気質が強いためのめり込むと異様な集中とこだわりを見せることから、経験上昇効果が得られる。またパーティー内メンバーにもその恩恵は向けられる>


 ラナへ良い影響が与えられたのかそれはなんだかうれしいな。


「カゲミツ様! やりましたね、大手柄ですよ!」


 ウキウキワクワクでうれしさが抑えられない様子のラナへ、俺はその気分に砂をかけるようなことを言わざるを得なかった。


「悪いけど、今回の件、ドラゴンが勝手に飛び去ったってことにして終わろう。誰の手柄でもないよ」


「え? だって!」


「俺とラナで様子を見ていたら、目に刺さった棘が勝手に抜けたようで落ち着いて飛び去って行った、でいいんじゃない?」


 きょとんとしながらしばらく震えていたラナ。ああ、また水を差すようなことをしてしまった。


 だってそうしないと俺は神殿から目をつけられて、確実に暗殺とかされちゃうルートなんだよ。


 実際、遮光コンタクト作って目に押し込んだぐらいなことしかしてないんだし。


「わ、わたし、感動しました! カゲミツ様、私ったら手柄とかそんなことばっかり考えていて本当に恥ずかしいです」


 うるうると涙を浮かべながら俺の手を握りだすラナ。


「一番大事なことって、街への被害が防がれたことなのに、カゲミツ様かっこいい!」


 頬を紅く染めながらぼんやりとした表情で立ち尽くすこの子は、まじでかわいい。


 あまりそういう目で見ないでくれ、心が……心が揺さぶられるから。


 そういう気持ちがあることも事実だけど、一番の理由は勇者神殿にこれ以上目をつけられたくないから。

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