第23話 水遊び

この世界は寿ことほぐ春から始まる。

元の世界の3月から4月から始まる。

だから、5月と言えば皐月で春をイメージするが、こちらでは真夏だった。

一番暑い頃だ。


水遊びをする子供が多くなる。

下水路には橋が幾つも架かっており、その中央にかわやがある。

そう、トイレだ。

汚物が流れる下水路が子供らの遊び場所になる。

確かに6区は最も東側であり、用水路から落ちて来た水が滝のように流れ出し、比較的に綺麗な下水路だ。

だから、子供らの水場になるのだ。

だがしかし、汚物を流す下水路に変わらない。

井戸水で流せばいいと言うモノではない。

気分の問題だ。

俺は断固拒否した。


「ア~ル、氷を作って!」

「は~い」

「姉ちゃんはア~ルがいて幸せよ」

「そうですか、はっははは」


俺はすぐに大きな氷を出す。

どうしてこんな事になったかと言えば、下水路での水遊びを姉さんが迫ったからだ。

俺は嫌がった。

すると、俺に姉さんが怖い顔で迫って来て落とそうする。

咄嗟に俺は他の場所を提案した。


「姉さん、『秘密の水遊び場』に行きましょう」

「秘密の?」

「姉さんと俺だけの水場です」

「いいわね。そこに行きましょう」


何故か、下の兄も付いて来た。

二人きりで無くなったので不機嫌になった姉さんは下の兄を水で攻撃して楽しんでくれたので最初は良かったのだ。

えっ津、水場はどこかって?

珍しい場所ではない。

元々、姉さんが『秘密の花園』と呼んでいた菜の花畑の水槽だ。

水柱ウォーターウォールが外に零れないように広く、桶で水を掬い易いように浅めに作ってあった。

子供用のプールのような仕様だ。

月に一度しか使わない水槽だったが、生活魔法『清浄クリーン』で綺麗にすると、腰辺りまで水を張った。

しかし、すぐに温くなって来る。

そこで氷を浮かべて水を冷やした。


最近は午前の作業が終わると、姉さんは水槽で遊ぶのが楽しみになっていた。

暑い中で作業を終えると汗だくだ。

姉さんは水槽に入って楽しむ。

最高だと口にする。

担当官さんが羨むくらいだから貴族より贅沢をしている。


羨ましそうに見ていた子分らを姉さんが誘ったので、皆で一緒に入っている。

風呂に入る習慣がないので生活魔法『清浄クリーン』を掛けてから入れた。

もちろん、水着なんてない。

普段着でそのまま飛び込む。

毎日やっていると皆の服から黄ばみも取れて真っ白になり、肌も小綺麗になってきた。

とても下町の子と思えない。

洗濯入らずだから毎日のように水遊びをしてくるようにと母親から言われているとか?

何か主旨が変わっている。


さて、大勢で入るとすぐに温くなる。

俺は水槽に氷を浮かせた。

氷が解けて温くなると姉さんが氷を要求するようになった。

毎日、水槽を洗って、水を張って、皆を洗って、その都度に氷を浮かべる。

俺の仕事が増えた。

あれぇ?

これなら下水路を清浄してから入った方が楽だったかも知れない。

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