第24話 ゲームプッシュスタート
「奏真に一足早く見せたくて、制服を着てここまできたと……」
雫さんはふむふむと口ずさんでいた。
「レヴィアは可愛いからなー、制服姿がめちゃくちゃ似合ってるな!」
「そ、そんなことないですよ、雫さんのほうが似合ってます!」
雫さんの言葉に照れつつも彼女も褒める。
「それにしても雫さん、カーディガン着てますけど暑くないんですか?」
「あついぞー」
「それじゃ何で——」
と、口にしてすぐに海の家でのことを思い出し、私は「あっ!」と声を上げると同時に口元を両手で押さえる。
「わかってくれたみたいだなー、私はキョウくん以外には見せたくないんだ!」
すみませんと何度も謝るが……内心、羨ましいと思っていた。
「それにしても、制服姿のレヴィアを奏真にすぐ見せるのはもったいないなー」
腕を組み「うーん」と唸り声をあげる雫さん
「そうだ!」
何かを思いついた表情で声をあげると、カバンからスマホを取り出す。
「ふっふっふー、楽しくなってきたぞー」
雫さんは不敵な笑みを浮かべていた。
……可愛らしいだったので私は微笑ましく見ていた。
「レヴィアさんと駅で待ち合わせね、そりゃニヤけ顔にもなるよね」
「あったり前だ! 恭一だって雫と出かけるとなったら嬉しくて顔ぐらいニヤけるだろ! いや、ニヤけるに決まっている」
駅までは一緒に行こうかと言う話になり、すぐに教室を出ると、廊下を歩きながら横にいる恭一の顔に向けて人差し指を向けていた。
「こらこら、人を指差すなって親に言われなかったかい?」
恭一はいつもの女子に人気のスマイルのまま俺の手を下ろす。
「うちの親、放任主義だったから……ってごまかすなよ」
「そうだなぁ、ご想像におまかせするよ」
「つまんねーの」
下駄箱でローファーに履き替えて校舎を出る。
空は一面の青空が広がっており、遥か上空から降り注ぐ太陽の光があるからか、辺り一面が輝いて見えていた。
——これで異常気象と言われてる蒸し暑さがなければ最高のデート日和になると思うんだが。
「おーい、恭一! 早くしないと置いていくぞー!」
「はいはい、せっかちな人は嫌われるよ」
丁寧に上履きを下駄箱に入れた恭一は早足で俺の元にかけつけた。
「あれ、この変って伝えたんだけどな」
「僕もだね」
待ち合わせ場所に指定した駅の切符売り場の前に来たのはいいが
レヴィアの姿はなかった。もちろん雫の姿も。
「雫のほうが早く終わったって言ってたからいると思ったんだけど、もう少し待ってみようか」
恭一はスマホを取り出して画面をスライドしていた。
雫にメッセージでも送っているんだろう。
俺も着いたことをレヴィアに伝えようとスマホを取りそうとするとカバンの中でブーブーと音を立てて震えていた。
レヴィアだろうなと思い、スマホを取り出して画面をタップする。
「あ、レヴィア? 待ち合わせ場所についたから——」
『——ふっふっふー、レヴィアじゃなくて残念だったなー』
どう見てもレヴィアの声ではなかった。
と、いうか声色を変えているが、口調ですぐに誰だかわかった。
「おまえ雫だろ、電話相手間違えてるぞ」
俺が雫の名前を呼ぶと隣にいた恭一がこちらを向く。
『いいかー、一度しかいわないからちゃんときけよー』
「はいはい、わかったから早く言えよ、俺はレヴィアとだな——」
『そのレヴィアはこの私が預かったぞー!』
雫の言っていることが理解できずに一瞬、脳内が止まる。
そして、すぐに脳内の時が動き始めると……
「な、なんだってー!!!!」
公衆の面前であることを忘れて大声で叫んでしまっていた。
恭一は両耳を指で抑えていた。
「ちょっとまてよ、レヴィアとはこれからデートなんだぞ!」
『それならなおさらのこと、必死にレヴィアのことを探すんだぞー、さもないと……』
「な、何をする気だ……!」
『レヴィアがあんなことやこんなことになるかもなー』
『え、雫さん! ちょっと……』
雫の声の後ろでレヴィアの声が聞こえる、俺はレヴィアを呼ぶが聞こえていないようだった。
『それが嫌なら血眼になってさがすんだー! はっはっは!』
と棒読みに近い悪役のような笑い声をあげ、一方的に電話を切られてしまった。
「……もしかして雫から?」
「もしかしなくても雫だ」
「で、何だって?」
「レヴィアを預かったから必死に探せってさ」
「あー……」
恭一は目を瞑って目尻を押さえながら苦悶の声をあげていた。
「やっぱそうか……」
「やっぱって?」
俺が言葉を返すと恭一はため息をつきながら俺にスマホを見せる。
スマホの画面には……
Shizuku.K
『ごめんキョウくん、奏真のやつと一緒に探してあげてー、夜はいっぱいもえあがろうぜー』
と、書かれていた。さりげなくとんでもない話まで入っているんだが
「まったく、しょうがない子だな雫は」
恭一は乾いた笑いをしながら俺の顔をみる。
「雫も悪気があるわけじゃないから、たまには男同士で遊ぶのもわるくないんじゃないかな……?」
俺や自分を無理矢理納得させるように話す恭一。
それに対して俺は盛大なため息をつくと恭一も一緒にため息をついていた。
「これでヨシ!」
雫さんは片足をあげながら誰もいない方向を指を指して呟いていた。
「雫さん、よかったんですか? 恭一さんとおでかけをするのでは?」
「大丈夫ー! キョウくんとは夜からラブラブすればいいんだしー」
屈託のない笑顔で話す雫さん。それにしてもラブラブって……
「今のレヴィアの姿を奏真に見せたって、どうせエロ顔になって舐め回すようにみるだけだしなー」
ひどい言われようなんだけど、なんか納得もしてしまう。
……ごめんなさい、奏真さん
「それに、いつも私のワガママでキョウくんをしばりつけてるからなー、たまには男同士で仲良く遊ばせるのも悪くないだろー」
「そ、そうなんですね……」
「っていうのは建前で、本音はかわいいレヴィアを独り占めしたいだけなんけどー」
雫さんはニシシと含みのある笑顔で笑っていた。
「それじゃ、ボチボチ移動しようかー」
雫さんは私の手を掴んで走り出していく。
「わっ、ちょっと待ってください雫さん!!」
私は引っ張られるように雫さんの後を追っていった。
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
10月からですが、仕事が多忙になり毎日更新が
厳しくなりましたので頻度を落としていきます。
大変申し訳ございませんm(_ _)m
週2回(前と同じように水曜と土曜日)は
キープしていきますので、これからも
どうぞ応援のほど、よろしくお願いいたします。
次回は10/5(水)追加予定です。
■作者の独り言
恭一と雫の話も書きたいなぁ・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読者の皆様に作者から大切なお願いです。
「面白そう」
「続きが気になる」
「応援する」
などと少しでも思っていただけましたら、
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