実は……

俺は、磯部千秋の言っている意味が全く理解できなかった。だけど、どうしても嘘をついてるようには思えなかった。結局、俺達は入れ替わった。


葵や雪那や恭介に優しくしたいと思っていながらも出来なかった。膝の痛み、学がないから仕事が出来なくて、俺は三人に酷いことばかりをし続けた。

そんな日々から抜け出したくて悩んでいた時にやってきたのが磯部千秋の提案だった!駄目でも、のるしかなかった。俺の人生のラストチャンスだったから…


実行して、俺は本当に磯部千秋に変わった。膝が痛くなくて快適な体を手に入れた。そして、優しい母親も…。


俺は、葵の両親や俺の母親に会いに行った!磯部千秋が見つかっていない事に、ホッとしていた。俺と葵の人生は生まれ変わった。俺は、磯部千秋に心底感謝していた。そして雪那と恭介と再会した。あの日俺は、二人を見つめると関わり合いたいと思ってしまった。


「千秋、どうしたの?」


「今日は、葵の両親の所に行きたいんだけど…。いいかな?」


「いいよ」


俺は、葵を連れてご両親の所に行った。


「葵、ちょっと買ってきてくれない?お砂糖、駄目かな?」


「いいよ」


「じゃあ、俺も…」


「千秋君は、いいのよ!すぐ、そこだし!葵、一人で行けるでしょ?」


「行けるよ」


そう言って、葵は出て行った。


「あの子いたら話せない事でしょ?」


「お義母さん」


お義母さんは、俺の気持ちを汲み取ってくれていた。


「ほら、お父さんも一緒にね」


そう言って、お義母さんとお義父さんの所に行く。


「あの、こんな事を話すと頭がおかしいと思われるかもしれませんが…」


「何?」


「俺は、田辺誠なんです。妻は、田辺葵です。それで、お二人の娘さんは…」


「田辺葵さんの中にいる?」


「お義母さん、お義父さん、すみませんでした」


「千秋君は、どうにかしたいのか?」


お義父さんの言葉に俺は、泣きながら頷いていた。


「どうしたいの?」


「俺には、娘と息子がいました。名前は、雪那と恭介です。俺は、田辺葵の親父に突き飛ばされて膝を悪くしました。それから、思うように働けなかった。それに、子供達を見てもくれない両親達で!それに、俺は…」


お義母さんは、俺の手を握りしめる。


「言わなくていいのよ!全部を話さなくていいのよ」


「すみません」


「で、どうしたいの?千秋君じゃなくて、誠君になるのかな?」


「千秋でいいです。俺は、今、磯部千秋さんなんで」


「そうだよね!で、どうしたいの?」


「俺は、雪那と恭介の成長を見たいです。雪那がもうすぐ小学生になります。ランドセルを買ってあげるとか、自転車を買ってあげるとか…。そんな事を一緒にしていただけませんか?」


葵のお義母さんは、俺の手をさらに強く握りしめてくれる。


「千秋君がいいのなら、私達はそうしたいよ」


そう言って泣いてくれる。

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