頭が狂ってる

「はぁ?言ってる意味がわからないんだけど」


「ですから、私の妻の魂と田辺葵さんの魂が入れ替わったんです。だから今、田辺さんといるのは、私の妻なんです」


「あんた、自分の奥さんが目覚めないからって頭おかしくなってんじゃないの?」


田辺さんは、イライラしながら俺を見つめている。


「違うんです!本当なんです」


「あんたさ!人を馬鹿にすんのもいい加減にしろよ!自分が少しいい暮らし出来てるからってさ!奥さんが目覚めないから、俺の嫁を奪おうってこんたんか?」


「違います。本当なんです。信じて下さい」


「あのね、信じれるわけないだろ?」


田辺さんは、呆れた顔を俺に向ける。


「お願いです。信じて下さい」


「だから、さっきから頭おかしいだろ?ドラマやアニメじゃあるまいし!現実に入れ替わり何かあるわけないから」


「どうして、信じてもらえないんですか?」


「信じるわけないだろ?馬鹿馬鹿しい」


田辺さんは、そう言って立ち上がって帰ろうとする。

俺は、田辺さんに土下座をする。


「お願いです。信じて下さい」


「ふざけんな!気持ち悪い」


「お願いです」


「無理だから」


田辺さんは、そう言っていなくなってしまった。俺は、田辺さんがいなくなって泣いていた。


「葵、ごめん」


涙が、流れてくる。


「俺、やっぱり中身が葵じゃなきゃ嫌だよ」


俺は、床にうずくまってずっとずっと泣き続けた。


「千秋、鍵開けっ放しだったよ」


その声に顔をあげる。


「お腹痛かったの?」


「葵」


俺は、葵を抱き締めた。


「今日は、来る日だったでしょ?短いけど」


そう言って、葵は時計を見つめていた。


「葵。会いたかった」


「千秋、泣かないでよ」


「俺、何とかするから」


「何ともならないよ!千秋」


俺は、葵にしがみついて泣いていた。


「俺、中身が葵じゃなきゃ嫌だよ」


「わがまま言わないでよ」


「ごめん。でも、やっぱり俺は、中身が葵じゃなきゃ嫌だよ」


「千秋、ごめんね」


葵は、俺の髪を優しく撫でてくれる。


「死ぬまで、葵と生きて行きたかった」


「千秋」


「ずっと一緒に居たかったよ!葵」


俺は、葵をギューっと抱き締めていた。


「千秋、時間ないから!しよう?」


「うん」


俺は、葵を二階に連れて行く!最初と違って、田辺葵との交わりはよくなってきていた。俺は、田辺葵でもいいから葵と生きていきたい。


「千秋、帰るね」


「待って!もう少しだけ居て」


葵は、終わって暫くしたらすぐに帰ってしまう。俺は、初めて葵を引き留めていた。限界だった!葵と一緒に居たくて限界だった。


「千秋、帰らなきゃ」


「ごめん。引き留めて」


「ううん」


葵は、いつも通り帰ってしまった。田辺さんの元に…

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