千秋の夢

「ただいまー!」


「お帰りなさい」


「葵、体調大丈夫?」


「うん、大丈夫」


「よかった!」


そう言って、千秋はビールを冷蔵庫にしまってる。


「日曜日、母さんがご飯食べにおいでって」


「えー!久しぶりにお母さんのご飯食べれるの嬉しい」


「スペアリブしてくれるって!葵が好きだからって」


「お昼軽めにしてから行こう」


「いいんじゃない!」


千秋のお母さんと私は、お父さんの闘病生活を経てから仲良くなった。それからは、二週間に一度日曜日に晩御飯を食べに行くようになった。ここ、二ヶ月はお母さんが忙しかったから…。本当に、久しぶりだった。


「葵、愛してるよ」


千秋は、そう言って私を抱き寄せる。


「私もよ!千秋」


千秋は、優しいキスが好き!濃厚なキスじゃなくて、軽いチュッてキスが大好きだった。それを家中どこで会ってもやるのが好きな人。私もいつの間にか、千秋のそのペースに巻き込まれていた。


「葵、今日は晩御飯何?」


「今日はね、牛肉巻き」


「それ、好き」


いんげん、人参、ヤングコーンを牛肉で巻いて甘辛いタレを絡めた、この料理が千秋は大好きだった!


「たくさん作るね」


「うん!お弁当にもいれてね」


「わかった」


千秋は、大好きな晩御飯は次の日のお昼にも食べたい人だった!だから、私はわざと多めに作る。

千秋は必ず「これ、お弁当にはいる?」と聞いてくるから!結婚した時は、よくわからなかったから…。晩御飯の分だけ作って「はいらないよ」って言っていた!だんだんと、千秋は悲しい顔をするようになった。だから、私は千秋に尋ねてみた!


「次の日のお弁当にいれてほしいの?」って…。

そう聞いた私に、千秋は「晩御飯とお弁当で、美味しいのは二回食べたいんだ!」と話してくれた。


それから私は、晩御飯を2.5人前作るようになった!そしたら千秋が、お弁当を喜んで食べてくれるから!


「千秋、出来たよ」


「おお!美味しそう!持ってくよ」


そう言って、千秋はお皿にいれた牛肉巻きを持っていく!私は、味噌汁をよそう。ご飯もいれる。千秋は、それを何度も取りに来てくれる。


『いただきまーす』


向い合わせで一緒に食べ始める。


「美味しい、葵!最高」


ニコニコしながら、喜んでくれる。


「よかった!」


そうだ!私、千秋が美味しいって言ってくれてるのが好きだったんだ。喜んでくれてるのが好きだったんだ。もう、子供なんか望まないから…。


千秋の元に行かせて!千秋に会わせて!


ジジジってノイズが走っていく。


「千秋、千秋」


「葵、どうした?」


「抱き締めて」


「うん、わかったよ」


「もっと強く…千秋」

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