夢みたい

高級な缶詰を開封して、書いてあるやり方通りにコーンスープを作った。

それを、お洒落なスープ皿に注いだ。


「サラダは?」


「まだ、作ってない」


「じゃあ、昨日の残りのアスパラでいいよね」


アスパラなんて高級な食べ物は、ほとんど食べれなかった。だいたいは、カレーに使う野菜とキャベツかもやしだ。


「うん」


「タッパーから、皿にうつして持って行っておくよ」


「うん」


千秋さんは、手際よくうつしかえて持っていく。何で、こんなに幸せなの。

お城に住んでるわけじゃないけれど、夢みたいな生活を私はしている。

今までなら、こんな生活をする事はなかった。

まともに食事をとれる、そこに罪悪感も嫌悪感もないなんて!そんな日がやってくるなんて思わなかった。


「食べようか?」


「うん」


私は、スープを持ってきた!向かい合って座る。千秋さんは、意外と綺麗な顔をしている。美男美女、それがしっくりくるような二人だ!だから、子供出来なかったのだろうか?


『いただきます』


私と千秋さんは、そう言って食べ始める。


「葵、旅行に行かないか?」


「いつ?」


「うーん!大型の連休かな?どう?母さんも誘いたかったりする」


「いいよ!行こう」


私は、キラキラと千秋さんを見つめる。


「珍しく乗り気だね!何か嬉しいな!三日前は、落ち込んでいたから」


「そうだね!でも、今はもう大丈夫」


旅行なんて行った事がない!お母さんと行けるって事は、千秋さんのお母さんと私は仲がいいって事よね。


「葵が嬉しいなら、俺も嬉しいよ!二人で生きていく道になってごめんな」


「何で?何で、千秋が謝るの!私は、いいのよ!二人で生きていったって」


千秋さんは、驚いた顔を向ける。そして、泣いた。


「そんな事言ってくれて嬉しいよ!俺、母さんと葵が仲よくしてくれてて嬉しかったんだ。他所は、そうじゃない人もいるから…」


葵さんは、可哀想な人!

こんなに素敵な旦那さんがいるのに、何で赤ちゃん何か望んじゃったの?


「そうね!わかるわ」


わかる!私も、あいつの親に罵られていたからわかる。息子を働かせる事もしない。そんな人間!!


「オムライス、美味しいよ!めちゃくちゃ、うまい」


「千秋、幸せ?」


「うん、幸せだよ!凄く」


千秋さんは、ニコニコ笑いながらご飯を食べている。素敵な笑顔!胸がドキドキする。私は、束の間でもこの幸せの中にいたい。


「ご馳走さまでした」


「下げるから、置いてて」


「一緒にお皿洗うよ」


「本当に?」


「うん」


そう言って、千秋さんは食器を下げていく。私もちょうど食べ終わった。

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