第1話 サイコレンジャー出撃!(3)

「うわあ! 俺は水が弱点なんだ!」


(ええっ!? カメなのに? サメなのに?)


 カメザメオンが雨に打たれて苦しみだす。慌てる戦闘員を蹴散らし、ブルー達は特殊ケーブルでカメザメオンを捕縛した。


「凄いぞ、ブルーお手柄だ!」

「ブルー、見直しましたわ」


 みんなが口々にブルーを褒め称える。


「みんな、ちょっと待って。別にブルーが予測しなくても、大雨は降ったんじゃないの?」


 ブラックが余計なことを口走った。


「そんなことはどうでも良いじゃないか! これからも力を合わせて頑張ろうぜ!」


 ブルーはみんなの肩を抱き、満面の笑顔でそう言った。



 廃業した採石場跡地。切り崩された山肌に「ワルダ―日本支部」と書かれた大きな看板が設置されている。


 採石場内部はワルダ―のアジトとして改築されている。アジト内の廊下を、シルバーグレイの執事服を着た糸目の若い男が颯爽と歩いている。彼は「ホワイト将軍」とネームプレートが掲げられたドアをノックする。


「入れ」


 中から若い女性の返事があり、執事姿の男はドアを開けて中に入った。


 部屋の中には目元を隠す白いマスクを着けた、セクシーな白い戦闘スーツと白マントの美女が、ぬいぐるみなどのファンシーグッズで埋め尽くされた重厚感のある大きなデスクに座っている。彼女は全身を白いコスチュームで固めているが、ストレートの長い頭髪は、対照的に混じり気の無い漆黒で美しい。


「失礼します、ホワイト将軍。もうご存じかと思いますが、カメザメオンがやられました」

「ええっ?! 死神、それホント? 知らないわよそんなこと。カメザメオンって、水に弱いのを除けば、うちの中でも屈指の強さの改造人間だよ。そのカメザメオンがやられたって言うの?」


 ホワイト将軍と呼ばれた美女は驚いて席を立つ。


「その水に弱いのが致命的なんですが……」


 死神執事は困ったように、控えめに反論する。


「ええっ! だってあいつ、もの凄く硬いし、どんな攻撃でも怪我しないんだよ。パワーも凄いし」

「ぶっちゃけ、ホースで水をぶっかければ、簡単に気絶するんですが……」

「そっかー。まあ、仕方ないな。次の怪人を送るか。でも、普通の人間じゃ太刀打ち出来るはずないわよね。なぜやられたの?」

「普通の人間ではございません。いよいよ、サイコレンジャー5が動きだしたのです」

「サイコレンジャー5? 何それ?」


 ホワイト将軍はきょとんとした表情を浮かべる。


「ホワイト将軍、あなたの超能力『千里眼』で戦況をご覧になっていなかったのですか?」


 「千里眼」とはホワイト将軍の持つ超能力だ。彼女は一年以内に会った、自分の知っている人物が居る場所は、遠く離れていてもその周辺の様子が見えるのだ。


「ああ、ごめん、今日どうしても観たいドラマがあったから、そっちを観てたの」


 無邪気に笑うホワイト将軍を見て、死神執事は小さくため息を吐く。


「私以外の人間に、そんな話を漏らさないでくださいよ。将軍の威厳に関わりますから」

「ごめん、ごめん。死神にはいつも感謝してるよ。ありがとね」


 ホワイト将軍は無邪気な笑顔で死神執事の肩に手を置く。そんなホワイト将軍を彼は優しく見つめていた。

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