定年、26歳

地引有人

プロローグ

『来シーズンから年齢制限を設けます』

選手は二十六歳シーズンを以て退団しなければならない。

ビリオンスターズ――独立リーグの球団の選手である加治屋昌隆が知ったのは家庭教師のバイトの帰り。

唐突な解雇通告だった。

来シーズン中に二十六歳を迎える加治屋はシーズンを終えれば球団を去ることになった。

JPBを退団した選手が独立リーグに入団する場合もあるので、二十六歳以上の選手を保持できる枠は球団にはある。しかし、加治屋は対象にならない。

人気、知名度ともにない独立リーガーだから。

JPBのドラフトにかかることを目指してきた加治屋の放つストレートの最高球速は百三十キロ後半、変化球も打者の空振りがとれるほどのキレはなかった。

小、中、高、大、さらに独立リーグまでの間、野球を続けてきたが、JPBのスカウトは加治屋に興味を示さなかった。

しかし、野球がしたい。

野球を仕事にしたい。

その思いで独立リーガーを続けて四年目を迎える。

加治屋は人生の岐路に立たされていた。

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