第4話 夢見の一族


後半のセリフは 半開きの扇の影から言われるが ヒビキが扇を優しく奪い取る


「予知夢は 男系に伝わることが多いですからね 姉上にはほかに魅力が沢山ありますから大丈夫ですよ」


「慰めてくれなくても大丈夫よ 少し、羨ましいと思っているだけよ」


ビクトリアが目をそらしながらツンとして言い

それから 興味深げにヒビキの目を見る


「ねえ ヒビキはどんな夢を見たことがあるの?

古くは河川の氾濫 や 地震の予知をした者があり 要人の暗殺を未遂に防いだこともあるってわが家の書庫の資料にはあるけれど?」


「姉上 それ 角秘密書庫のヤツですけど?」


「あ 大丈夫よ ヒビキだから言っているのよ

なに?その顔? 疑っているの?」


今度はビクトリアが してやったりという笑顔になる。


「コホン まあ いいや」


一つ 咳払いしてからヒビキが続ける


「実は 僕にネイビー家からの声がかかるきっかけになった夢は 姉上の夢だったんですよ」


「わたくしの?会ってこともないのに?」


「それが 夢見といわれる所以でしょうね」


「どんな夢?」


ビクトリアが食いついて来る


「姉上、どんな夢でも怒ったり 落ち込んだりしないって約束してくださいね」


「わたくしの事なんでしょう?知りたいわ!

落ち込んだり 怒ったりしないから教えて頂戴」


ヒビキがもったいぶって 唇に指をあてて考える振りをする


「ヒビキ!お願い 教えて頂戴!」


ヒビキはさっきまで自分の唇に当てていた指をビクトリアの唇に当てる


「いいですか これは夢の話です 現実でも 未来でもないんだからね」


ヒビキは真面目な顔になって ビクトリアの手を握る 


「ぼくの生家では 男兄弟がみんなで一つの部屋で寝ていたんだけど 

あの日はたまたま僕だけ熱が出ていて隔離されて

一人きりで寝ていました。


熱のせいか いつもと違う環境のせいか ゴロゴロと寝返りを打っていたけれど そのうち どこか豪華な場所を上の方から見ているのに気が付いたんです。


豪華だけれど大人の姿が見えないその場所には 制服を着た生徒たちが沢山、

て集まっていた


その中心で ひときわ綺麗な生徒が 金髪碧眼の王子に責められていた

「ビクトリア ネイビー 謝罪せよ」

という 王子の言葉に 

「お言葉ですが王子 証拠はございますか?」

そういうビクトリアの黒い瞳はとても力強かった。

言葉に詰まった王子に

「証拠も無しに わたくしに謝罪を求めるなんておかしいこと」

扇で口元を隠して嗤ってから 長い黒髪とスカートを翻して去って行くビクトリアの姿はお話の中の女王の様でした。


僕はそんな彼女をうっとりと見つめながら

同時に これは親に知らせるべき予知夢だ と夢の中なのに思ったんです。


会ったことも無く 名前も知らないはずの本家のお嬢様が 黒い瞳と黒髪だということから予知夢として認められ、本家であるネイビー家に話が伝わり 僕 ヒビキはネイビー家の養子となりました。


あの夢のビクトリア ネイビーは僕の初恋なんだよね」



「まあ ヒビキったら 5歳が初恋なの おませさんね」


ヒビキの告白にビクトリアは気づかずにスルーする


 

「では あなたは5歳の時に今日の予知をしていたっということなのね?

 それならば 今日はパーティに出ないでさっさと帰宅すればよかったのではなくて?」


「それも考えていたんですけどね 

…というか ずいぶん前から 今日の糾弾劇を防ぐべく動いていたんですけどね

予知夢って予知ですからね けっこう決まっている部分が多いみたいでさ。

ほら 姉上がさっき言った 地震予知だって予知は出来るけれど 地震を起こらないようにはできないでしょ? ただ 知っていたから被害を少なくできた。 


それから 暗殺だって その時に外出を控えれば その日の暗殺は無いかもしれない でも 他の日 予知夢にない日だったら?

そう考えたら その日の暗殺計画は実行させて被害を抑える方が良いかもしれない でしょ?」


ヒビキは 夢見の一族らしく見解を述べた。




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