先ほど最愛の義姉が王子に糾弾されました~夢見(偽)の伯爵令息は義姉を悪役令嬢には致しません

TO BE

第1話 よくある糾弾劇

学園祭の最後を飾る、後夜祭の開始を告げる花火が夜空を彩る


生徒会主催の後夜祭の会場、平等を謳う学園ゆえに 様々な階級の生徒たちが集う。

 

簡単な立食パーティであり ダンスも無く、ドレスコードも無い為平民は基本制服で参加するが、貴族層の生徒たちはそれなりに着飾って参加している。

着飾っている彼らは貴族故、生徒会長である王子のもとへに挨拶に向かう。


金髪碧眼の美しい王子に近づけるめったにないチャンス、と喜び浮かれる者もあれば ”平等”を謳う学園で何故と若干不満を持つ者 そういうものだとわりきっている者 様々な生徒たちが王子の周りに集まっている。


今年が初めての参加となる伯爵令嬢ビクトリア ネイビーが濃紺のドレスに身を包み、その義弟ヒビキと共に王子に挨拶しようと王子の前に進み出た、その時


「ビクトリア ネイビー。 よくわたしの前に、いや、スーザンの前に顏を出せたものだな。 お前がスーザンにいやがらせを繰り返していることが私の耳にまで届いているとは思わなかったのか?スーザンに許しを請うてもらおうか」


王子から声高らかに告げられたビクトリアは、一瞬、何のことかわからない、という顔をした。

それでも 彼女が口を開こうとした時 義弟のヒビキがビクトリアを守る様に王子の前に進み出た。


「おそれながら王子 私は弟とはいえ 養子であるため姉と同学年です。

それ故に姉とは常に行動を共にしております。

しかし 私どもはそちらのスーザンという女生徒とは全く面識がございません。

面識のない者にいやがらせなどできるわけもなく 事実を今一度お調べいただけますようお願いしたします。」


突然の糾弾に怯むことなく、その美しい顔に微笑みさえ浮かべて王子に言い放った。

思いがけない人物の登場に王子が戸惑っている間に、ヒビキは姉を促して優雅に一礼し 姉をエスコートしてその場を辞した。


何事かと聞き耳を立てる者たちの中 二人が動くと、人垣が割れ、道が出来た。

二人の足を止めようとする者もいたが、ヒビキが困ったような微笑を浮かべ「ごめんね」と目だけで詫びると黙って道をあけた。



車寄せには、パーティが始まって間もない時間なのにもかかわらず 二人がすぐに戻ってくることを知っていたかのようにネイビー伯爵家の馬車が待機しており 二人を乗せると直ぐに学園を後にした。



****


しばらくするとビクトリアが溜息をつき、向かいに座るヒビキに詫びる。


「ごめんなさいね ヒビキ … せっかくの後夜祭だったのに、こんなことになってしまって。… 」


「そんな顏は姉上には似合いません。大体 何故姉上が謝るんですか? 

 あんな場所で 一方的に女性に謝罪を求めるなんて あの王子、バカですね」


「ヒビキ めったなことを言うものではありませんよ」


「大丈夫。 この馬車の中に居るのは僕と姉上だけだし。それにあの王子がバカ王子なのは本当だからね。

 姉上があのスーザンって女をいじめてたなんて 事実無根。 免罪なのは王子以外にはわかってる事なのに」


「あら 貴方はわたくしを信じてくれるのね 嬉しいわ」


「信じる、というか 事実を知っているだけですよ。だって 姉上は スーザンって女と面識はないでしょ?」


「今日 初めて見た方よ」


「そうでしょう? 姉上の目に入れていい人物は僕が厳選していますからね」


「え?もう一度言って頂戴?」


「あ 今のは忘れて下さい。姉上には関係のない話ですからね それより姉上 隣に座ってもいいですか? 道中少し長くなると思うので…隣の方が姉上とお話し易いので、いいですか?」


甘えるような声と視線にビクトリアは鷹揚に頷き少し身体を左に寄せる。


「長くなる?寄り道でもするの?」


ヒビキはいそいそと姉の横に移動して座る


「ええ 父上の思いつきでちょっと…」


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