第19話 『一蓮托生』の裏話 その7 映画や都電、地図の話

 かつらとたかしが親しくなるきっかけの映画『素晴らしき日曜日』。この映画を本編に出すきっかけとなったのは、Oさんがイメージイラストの参考に見たと教えてくれたことだった。幸いAmazonプライムで手軽に見ることが出来る。内容もさることながら、当時の上野周辺でロケしているため、町の雰囲気を知るのにも大いに助かった。

 主人公たちが戦災孤児と話すシーンもあり、昭和22年でも上野で戦災孤児たちが暮らしていたことが分かる。また、「まんじゅう二個10円」という張り紙もあり、八馬やまがカイたちに仕事代を渡すシーンの参考になっている。10円あればカイとリュウも毎日1食分くらいは買え、廣本ひろもとの差し入れと合わせてなんとか生きていけるだろうと思ったのだ。

 この『素晴らしき日曜日』の公開日に合わせ、『一蓮托生』の始まりは公開直後の昭和22年7月となった。


 2人がランデブーする映画『安城あんじょう家の舞踏会』。これも当時公開された映画で評判が良く、カップルが見てもおかしくない映画ということで選んだ。カスリーン台風災害後の公開というタイミングも良かった。これもAmazonプライムで見られる。帰宅したかつらがバラックで康史郎こうしろうとダンスするシーンは個人的にお気に入りである。


 かつら達が上野や谷中やなか墓地に向かう時に利用する都電についても調べた。幸いネットでは当時の路線について掲載しているサイトが数多くあり、当時の料金についても知ることが出来た。


都電16系統 湯島・上野広小路・厩橋

http://c5557.a.la9.jp/toden16-2.htm


都電厩橋線 路線図 - 鉄道歴史地図

https://rail-history.org/r/15361.html


 Oさんから教えていただいたものでもう一つ非常に役立ったのが、当時の航空写真である。こちらのサイトでは現在と過去の航空写真を比較でき、『一蓮托生』と同じ昭和22年撮影の写真が見られる。


両国駅周辺のお店/施設マップ - goo地図

https://map.goo.ne.jp/map/search/latlon/E139.47.50.531N35.41.37.766/zoom/11/?order=1&qo=%E4%B8%A1%E5%9B%BD


 康史郎が釣りをする厩橋付近や、康史郎が落ちる両国橋付近の描写にはこの航空写真が非常に役立っている。厩橋付近の空き地になっている一角に横澤よこざわ家はあったのだろう。


 また、かつらと隆のランデブーで何度か使われる「田んぼになった不忍池しのばずのいけ」。これも執筆前にネットで記事を見て記憶に残っており、ぜひ登場させたいと思っていた。


不忍池が田んぼに姿を変えた3年間。食糧難の時代、庶民のために奔走した人物がいた【街の昭和を旅する】【街の昭和を旅する】|さんたつ by 散歩の達人

https://san-tatsu.jp/articles/124722/


 『一蓮托生』から続く蓮のモチーフである「田んぼの不忍池」は、弟を守りながら戦後を必死に生き抜こうとするかつらのイメージとして隆の心に刻まれることとなる。

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