第8話 トルマリンリングの性能

 ミレミランさんの上半身が写し出された。両手を胸元まで挙げていて、どの指にもリングはついていなかった。

「最初は宝石アイテムなしで魔法を唱えてもらいます」


「私が戦闘の素人なのはエリ姉も知っているよね。私でも宝石アイテム有無での違いが分かるのかな」

「五体のダミー人形があって、魔法の威力で倒される数が異なります」

 ダミー人形は円形に並べられていた。


「つまり魔法の威力が高ければ、多くのダミー人形が倒れるのね」

「マイナはお利口さんです。あとで頭を撫でてあげます」

 エリ姉が頭を撫でる仕草を取ると、ハンターたちから笑いが起こった。最近のエリ姉はこのネタで振ってくることが多い。


 エリ姉に頭を撫でてもらうのは心のオアシスだけれど、公に知られてからエリ姉がネタとして使い出した。最初は嫌だったけれど今は平気になって、今日はどのように切り返すかな。


「私はお利口ですよ。何体倒せれば一人前レベルなの?」

 淡々と答えた。

「マイナが焦らなくてお姉さんは寂しいです。一人前は三体ですので、ミレミランさんの威力を確認してみようかしら」


 ミレミランさんがダミー人形と向かい合うと呪文を唱えだした。

 詠唱が終わって五体のダミー人形を囲むように雷が落ちた。一体のみが倒れた。

「雷魔法です。ミレミランさんは補助的に魔法を使うレベルです。一体への撃破は威力が小さいですが、魔物への牽制には充分です」


 配信映像が私とエリ姉に切り替わった。

「このあと宝石アイテムをつけて、ダミー人形が何体倒れるかを見ればよいのね」

「その通りです。魔法の威力が実感できると思います」


『リングの装着が終わりました』

 プロデューサーからの念話で、本当に便利な機能で助かっている。

「それは楽しみね。ミレミランさんの準備もできたみたい」

 ミレミランさんのアップになって、宝石アイテムは青色のトルマリンだった。


 先ほどと同じ呪文を唱え始めた。閃光の強い雷がダミー人形に直撃すると、今度は二体のダミー人形が倒れた。

「頑張ったにゃ。威力が増したにゃ」

 ミレミランさんが喜んでいた。その姿を見てハンターたちから拍手が起こった。

「一体の違いに見えますが、この差は大きいです。本来は厳しい修行が必要です。マイナにも違いが分かったと思います」


『注文が急増しました』

 ハンターには違いが鮮明に分かったみたい。

「私にも威力の違いが確認できたから、誰でも使えて便利そうね」

「一つ言い忘れたかしら」

「どうしたの?」


「この宝石アイテムには使用制限があります。雷魔法を使える魔法使いのみです」

「そうだった。先ほどのオパールペンダントは誰でも平気だから忘れていた。今回のトルマリンリングは雷魔法の使用者限定よ」


 忘れていた。配信映像の左側には、宝石アイテムの詳細が表示されている。その中にも雷魔法の使用者限定は書かれていたけれど、言葉での説明も重要だった。

 ハンターたちからは、しっかりしろとの声が飛んでいた。いつものことだろうとの大声もあって、一瞬にして笑いが起きた。


『キャンセルが増えました』

 やっぱり文字だけだと分かりにくいみたい。

「宝石アイテムの詳細は配信映像に載っているから読んでね。不安があれば注文時に聞いてもらえれば平気よ」


「お姉さんはマイナの詳細が知りたいです」

「宝石が大好きな、何処にでもいる普通の女性よ」

「普通かしら。マイナ通販番組はシュンターリア王国内でも有名です。マイナが普通ならお姉さんは驚きます」

 何故かハンターたちから賛同の声が上がった。

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