文学部のバニーガール

霜花 桔梗

第1話 バニーガールが現れる

 もし、この世界が終わりを向かえたなら。俺は進んで死のうと思う。そう、生きる事に軽薄なのだ。


 周りを見渡せば良い子ばかりだ。俺は違う、俺は違うと思っていても、結局は大人に媚を売る。

 例えば、嫌いな英語の授業をエスケープしたとする。特に怒られることもなく。プリントを一枚渡されて次の日に提出だ。そんなプリントをこなす意味もなく放置しようと思っても。簡単なので提出してしまう。


 そんな訳で、今日も英語の授業をエスケープである。それで、今、居る場所は屋上のスペースだ。


 基本、学校と言う場所は屋上の使い方が二極化する。完全閉鎖かフェンスで囲んで安全を確保ししたモノのかの二種類だ。


 この県立東里高校の屋上はオープンタイプだ。その屋上で俺は空を眺める。あー世界の終わり来ないかな。


 「君、文学部に入らない?」


 現れたのはバニーガールである。


 大きな胸にセクシーなヒップ、タイツに包まれた太股。思春期の俺には少し刺激的過ぎる格好であった。


「わたしの名前は綾乃、君の名前は何かな?」

「『市野下 香苗』だ」

「何か女の子みたいな名前だね」


 一番、気にしていることだ。何故、香苗なのであろう。と地球が一周回るくらい考えたが。不明だった。


「それで、香苗君は文学部に入るのかな」


 俺の部活は帰宅部だ、入っても問題ない。文学部で暇を潰すのもいいか……。


「入るのは問題ない、俺は集団行動が苦手だから意味があるかは期待しない方がいいよ」

「はい、この文学部はかなり自由ですから」


 と、言われて、部室棟に向かう。おいおい、今は授業中だぞ。綾乃には関係がないらしい。


 ま、学内でバニーガールの恰好だ。確かに綾乃は優等生ではないな。部室棟に着くと二階にある文学部の中に入る。


 すると、私服の眼鏡をかけた金髪女子が文庫本を読んでいる。確か、国語教師の宮前先生だ。


「おお、新部員の獲得ができたか」


 興奮した様子の宮前先生だがブラウスの谷間からはみ出た胸が印象的であった。


「紹介、するね、顧問の宮前先生だよ」

「あ、はい、よろしくお願いします」


 まただ、心にも無い事を言う。別に宮前先生によろしくされなくてもいいのにちゃんと挨拶をする。


「この文学部は女子しか居なかったので新鮮だな」


 宮前先生が上機嫌でいる。


「それで、名前は?」

「『市野下 香苗』です」

「うん?女子か?」

「違います、名前だけが女子です」


 ああぁぁ、『香苗』との名前を女子の名前と認めてしまった。子供の頃からずっと否定し続けた事なのに。


 俺は頭を抱えてふさぎ込む。


「元気ないね」


 綾乃は俺と腕を組むとたわわな胸が当たる。そう、綾乃はバニーガールの恰好である。俺の心が一気に興奮して胸が苦しくなる。


 それは、少し恋の予感する時間であった。

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