第11話 耳をふさぐ。

「こんにちは、万理望さん、今日はお別れにきました。おばあちゃんはいますか? 」


「え? ....お、おばあちゃんですか? 」


今、美澄みすみさんが何を言ったのかよくわからなかった。

いったい何を言っているのだろう?


奥の部屋からおばあちゃんを連れてくると、美澄さんはおばあちゃんにお礼の言葉をいっていた。


おばあちゃんは女性の手をなでながら『優香ちゃんも元気そうだね』と言っている。

しかし女性の反応は鈍くゆっくりとおばあちゃんを見るだけだった。


「万理望さん、あなたにもお世話になりました 」

「はい。 ....あのどこかに行っちゃうってことですか? 」


「はい 」

「どこへ? 」


「 ..静岡の方へ 」

「どなたですか? この方は? 」


「僕の婚約者です 」


私は店から飛び出してしまった。

もうそれ以上は聞きたくなかった。


商店街を思いっ切り走り抜けた。


そして小川のほとりで.. ただ泣いた。

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