第10話 山に躓かずして垤に躓く
(元々薄汚れていたのに、今度は本格的に真っ黒だな)
仕方ないと腰を上げ、縫いぐるみを拾い上げ川で洗う。最初はチャプチャプと気を遣い
猫が熊になっている。
あぁそうかと、全体を絞り水気を抜く…… すると今度は……
干乾びた人参に顔がある。
面白くなり
目が二つ無くなった。
これはいかんと水気を抜く為ブンブンと振り回しパンパンと両手で挟むとヨレヨレの老師が出来上がった。
殺される……
どうするか悩む。全てを無かった事にする為に
悪魔が
(埋めちまえばわかんねーよ、あいつアホだから。燃やしちまってもいいと思うぜ)
天使が
(それエマのご両親の形見でしょ?やばいって不味いってバレたら本当に骨も残らないよ。怒ったエマはあんたより強いよ)
「…… 」
いやほんとにこれどうしよう。汗が吹き出し止まらない。このままでは、狼なんてもんじゃない、とんでも無い悪魔を召喚してしまう。
そもそもこんな
べちゃっと地面に老師が万歳する。
たまらなくなり、水に着けてはまた投げる……
あははと喜びまた投げる……
泡を吹き出し失神寸前、眼球間際に
―――――⁉
ドガンと爆風が森を揺らす。両手を十字に頭を
視界がチカチカと途切れ、聴覚が麻痺している……
まずい――――― 逃げ―――――!!
この攻撃の全ては初めから彼女の手の内であり、
彼等の放つ一撃は戦況を変え、一瞬で歴史を変える。そう、彼女は既に幼き頃からの暗殺者だった。
双薙刀の派手な回転に目を凝らし、防戦一方、
「ぐはっ」
(しまった、派手に回転させてたのは、こちらへの意識を反らすため…… )
エマは俺を蹴り上げた反動で地表へと身を
投爆薬―――――⁉
―――――どこだ⁉
目の前で何かが反射する。勿論それは
しかしその直後、態勢を保てないままの直ぐ上を、閃光が走り耳を
―――――強い!!
(このままでは分が悪い)
森の中では
(相手がエマで有る事を今は忘れろ!! あれはエマじゃないあれは)
あれこそが本物の
俺は直ぐに立ち上がり、止血をする間も惜しみ走り出す。
(一つの場所に留まるな、走り続けて考えろ、次は何を仕掛けてくる? お前ならどうする? 俺ならば罠…… )
なっ―――――⁉
走り出す前に警戒をするべきであった。突如、ビンッと麻縄が、足を
敷かれた罠に
「ぐあっ」
(
すると頭の中で成程と、老人の策略に今更気づき納得する。
(剣のみで
――――初めからエマと戦わせるつもりで? ……
「 いや、そんな
(しかし、それがもし本意なのだとしたら、これは老師が俺に与えた試練なのかもしれない…… )
―――ならば、答えは一つ……
此処でエマとの闘いを
殺るか殺られるか―――――
それは決意に満ちた死合いの幕開けだった。
それと傷の止血が必要だ。背中の傷は大した事は無いが、肩の傷は深い。戦いが長期戦になればそれだけ不利に
(手当の為、少しでも身を隠せる場所が欲しい…… 幸いエマは俺の姿を見失ってくれているようだ、ならば今が
すると、ドゴンと空が
怒りの
(完全に我を忘れてる…… )
「おいおい森を切り開くつもりか? 」
するとエマの只ならぬ殺気に
(頼むから上手に逃げてくれよ…… )
森の王者にとっては初めての経験だろう、得体の知れないものが突如現れ森は戦場と化し、木々は
しかし何という獣臭だろうか、生きている大熊はこんなにも臭いものだとは思いもよらなかった。鹿肉のスープが直ぐそこまでこみ上げる。
かなりの距離を共に駆け抜けて来ると、焦った熊の乗り物が倒木に脚を引っ掛けゴロゴロと痛恨の転倒をしてしまい、お疲れ様でしたと俺の身体をポイと放り出す。
勢い衰えず同じくゴロゴロと小さな谷を転げ落ち、迫る立木に頭を強く打ち付け星が散った……
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