PKペナルティ


「……ああ、気持ちよかった」


俺は未だ余韻に浸っていた。

これまでの検証記録を元に殴り勝てた。


罠士を馬鹿にしたソイツの、最期のポカンとした顔は中々に傑作だった。


……で。


「報酬を受け取りますかって何だよ(困惑)」


受け取らない奴いるのかそれ?

いや待て、よく考えなくてもそれは受け取ったらヤバいもの。

見れば俺の名前表示はほんのり赤だ。オレンジに近い赤。


もしかしたら、このPKペナルティとやらが悪化して何らかのデメリットを追うのかも。


「ま、受け取るけどな――はい、と」



《経験値を取得しました》


《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》

《レベルが上がりました! 任意のステータスにポイントを振って下さい》


《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》

《罠設置スキルのレベルが上がりました!》



《体術スキルを獲得しました!》

《素手喧嘩スキルを獲得しました!》

《称号『罪を背負いし者』を取得しました》

《称号『初めてのプレイヤーキル』を取得しました》

《3000Gを取得しました》


《罪ポイントが加算されます》

《PKペナルティが加算されます》

《PKペナルティ第三段階》


「……は?」


理解が追いつかない。

アナウンスが滝雨のように流れていく。


レベル、一気に上がりすぎじゃないか?

スキル、一気に上がりすぎじゃないか?

称号、一気に貰いすぎじゃないか?

あと罪ポイントってなに?


俺の疑問も豪雨の様に流れていくが。



《オデ男 LEVEL8 軽戦士》

《玉子 LEVEL5 魔法士》

《カカリ LEVEL3 鍛冶士》



気付けば、遠くから俺を見る者が居る。

一人二人じゃない――きっと十数人。


考えろ。

俺が、今何をするべきか?


……逃げる!



「おい、あれ。逃げたぞ!」

「! レッドネームだ――っ!」



その声を背に俺はひたすら脚を高速で動かす。唸れ俺のAGI。

ステータス割り振りも、スキルの確認もその後でやろう。


……いや、待てよ。

自分は、どこに逃げれば良いんだ?


とりあえず、あの人が居ない方向へ!



「『罠設置』……はっ、はっ……」


まさか、初日から草原で匍匐前進するとは思わなかった。

今俺は、命からがらマップの端の方に逃げている。


《落とし穴を設置しました》


「――どこ行った?」

「あっちは――」


《落とし穴が発動しました》


『検証ナンバー20』。

横になった状態で落とし穴が発動すると、その分穴は広がってくれる。


「――居ないな」

「クソっ、確かレッドネーム倒せば経験値滅茶苦茶貰えるんだよな」


「ああ、だから絶対見つけるぞ――あっち探そうぜ」

「おう!」


こっちに視線を向けた瞬間、目の前に設置しておいた穴で回避。

……ああ、やっと違う方向に行ってくれた。


「ッ……」


また匍匐前進。

向かっているゴールは――無い。


ただ耐え忍ぶのが、自分に出来る事。

この赤い名前、俺が思っているより厄介なモノらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る