LEVEL1罠士 VS LEVEL10戦士



《アギト LEVEL10 戦士》



対峙するのは、鎧を着こんだ戦士・レベル10。

赤い髪。オールバック、身長は180㎝ぐらい。

荒々しいイケメンにクリエイトしたその見た目が、逆に残念に映っている。

中身と外見が釣り合ってないからな。


そんなアギトの残りHPは先程の落とし穴で85%に減少。

スライムや俺よりもダメージが多い……落とし穴は掛かる敵によってダメージが違うんだろう。

要検証。だかそれはこの戦闘が終わってからだ。



「――『罠設置』」

「させるかおらあ!」


「ぐッ……」



ダッシュ——近付いて来るアギト。

案外ソイツは反応が良かった。

手に持つ片手剣を振りかぶり、俺の首へ一撃入れる。


当然の様に何も出来ず食らう。

俺のHPが100%から50%まで減少。

ただ、この落とし穴だけは発動しなくてはならない。

右手を地面に擦らせながら、衝撃に任せ後ろに下がる。


3秒間の設置時間がまもなく終了――



《落とし穴を設置しました》



……成功。


「ははは! 無様だなおい、罠士さんは罠が無いと何も出来ないもんな~?」


笑いながら近付いてくるソイツ。

コイツ、事実を言ってそんな面白いか?


罠士なんだから罠に頼るのは当たり前。

むしろ褒め言葉だ。


「ありがとう」

「……チッ、どうせ『ソコ』にあるんだろ? バレバレなんだよ――っ!」


彼はダッシュ。

あから様に右手を地面に触れさせていたからか、そこを避ける様に彼は回り込んで剣を振るう。


至近距離。


「――『スウィング』!」


彼がそう声を上げると同時に、青いエフェクトが刃に伝う回し斬り。


当たればマズい。

だから『避ける』。

俺は右手に触れていたその場所にするりと飛び込んだ。


「よッ――」


《落とし穴が発動しました》


現れる空間。

40%まで削れる自分のHP、そして頭上をエフェクトが掠める――危なかった。


「なっ!?」

「残念でした……失礼!」


そして。

ココで、『回避』だけで終わらないのが『落とし穴』の深いところ。


『検証ナンバー6』。

落とし穴のサイズは、ハマったモンスター、プレイヤーの背丈分。

つまり頭まですっぽりハマる。

しかし、右腕を上げた状態ならどうなるか?


答えはその場合でも『背丈』のサイズのままだ。

つまり、何が言いたいかといえば。

『穴から至近距離にお前が居れば、穴からお前の足を掴むのも』可能だと言う事。


「な、なにしやが――!?」



『検証ナンバー18』。

落とし穴解除後、中に居た俺は当然の様に地上へと返還される訳だが。

この時――穴にハマった状態で、穴から手を出しスライムを掴んでいたらどうなるか?


答えは、『スライムと俺が両方穴から上昇する』。

穴下の俺は地面に。

スライムは空中に。



「なあああああ!? やっ、め――」

「重!」



今。

俺は両手に彼の足を掴んでいた訳で。

結果。落とし穴解除後、『俺達は上昇』した。


つまり――今彼は空中。体勢が崩れたなんてものじゃない。

アギトは既にバランスが取れず、足が上、頭が下の逆立ち状態になろうとしている。



「らあッ!!」



俺は彼の身体ごと、鞭の要領で腕を思いっきり地面に振り下ろした。

当然、後頭部強打。


「ぐがあ!!」

「……上手くいったな、『罠設置』」


《アギト LEVEL10 状態異常:気絶》


ふらつく彼。見れば大きくHPが減っているだけでなく……視線も定まってない。

見れば、頭上に何かひよこマークみたいなのが回っている。


……おいおいこれ状態異常か。

嬉しい誤算である、追撃余裕だな。

後でノートに書いておこう。



「墜ちろ」



《落とし穴を設置しました》

《落とし穴が発動しました》


「ま――っ!?」


気絶が治ったタイミングでもう一度落下。

彼のHPは、既に30%。

いやあ、穴に落ちた人間を見るのは気分が良い。


追撃ついでに礼を一つ。

もう一発――デカいのをくれてやる。



『検証ナンバー19』。

落とし穴にハマったスライムは、解除後地上に『上昇』し、戻る。

そのタイミングで、上から攻撃を加えればどうなるか――



拳骨ゲンコツッ!」

「ぐえっ!?」



その上昇エネルギーは無駄にならない。ボーナスダメージが入るという訳。


エレベーター式に上昇するソイツの頭頂部に、ありったけの力を込めて拳で殴る。

そして逃げる。殴り逃げ!



「く、クソがっ……」



HP、残り10%。

目の前に居るソイツは相当ご立腹。

流石に二連続で気絶とは行かなかった……残念。



「覚悟、しろよ――」



じりじりと近付いてくるソイツ。

恐らく、今罠設置を発動しようものなら『腕』を狙われ無効化されるだろう。


勿論これまでの手もバレている。

HPは10%だが、まだまだひっくり返される確率は高い。


……でも。



「もう、罠は発動させねぇ――!!」



走る彼。立ち尽くす俺。


……なあ。教えてやるよアギト。

記念すべき、一番最初の検証記録を。




「――――――え?」




『検証ナンバー1』。

落とし穴は三個まで設置出来る。




「じゃあな」




落ちていく彼。

彼と闘う前から、近くに設置していたそれ。


……俺はお前が罠士を侮辱した後から、ずっとキルする気満々だったんだ。

そっちから向かって落とし穴にハマるのも想定済み。

安っぽい挑発にのらなかったのは計画を練る為。


最後、その穴に誘導していたのも――お前は全く気付かなかったが。



「ありがとう、人生で一番楽しかったよ」



《『アギト』様をキルしました》

《罪ポイントが加算されます》

《PKペナルティが加算されます》

《PKペナルティ第二段階》


《報酬を獲得しますか?》

《報酬(2)を獲得しますか?》

《キル報酬を獲得しますか?》














△作者あとがき


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