第3話

学校では、何時も明るい百合花。

家に帰ると、父親が手を上げる様になった。

理由は、会社の経営が悪化して、百合花が

婚約すれば、融資をすると言う、会社の

社長が現れたからだった。

百合花は、いくら叩かれても、断り続けて

いたからだった。


(今日も、又、叩かれるんだろうな?

社会人なら、お母さんを連れて、あんな

家なんか出て行くのに!)

その事を、春樹は知ってしまうのだった。

ある日

放課後、教室で


「あれ?これ百合花、忘れてるぞ。」

と、誠二が机の上の、ポーチに気が付く。


「あー本当だな?じゃあ俺が、持って行って

やるよ!」

春樹が言って、そのポーチをカバンに入れた。

その夜、百合花の家に行く春樹。

家の玄関に立つと、大きな罵声が聞こえる。

ただ事では無いと玄関に、手をやると

玄関が開いていた。


「こんばんは。」

聞こえて無い、様子だった。

しばらく、立って居ると


「お前が、向こうの息子さんと、婚約

したら、父さんの会社は、融資が受けれる

んだよ、黙って婚約しろ!」


(何を言ってるんだ?おじさんは。)


「嫌だ!そんな見た事も、無い人と

婚約なんて!」


「何で分からないんだ!」

そして、叩く音がする。


パシーン


「お父さん、止めてください!百合花には

関係の無い事でしょう!」


「お前は、口出しするな!」


パシーン


と、又、叩く音がする。

春樹は、見てはいけない、聞いては、いけない事を、聞いてしまったと、思った。

でも、止めに入ると、2人が又、叩かれる

と思い、そっと外に出て、玄関のドアを

閉めた。


(警察に言うと、又、大変な事になるし

百合花は大丈夫かな?でも、おじさんも

融資の為に、自分の一人娘を、婚約させる

なんて、むちゃくちゃだよ!俺に出来る事は

……無いな!せめて卒業したら、結婚して

百合花と、おばさんを、あの家から連れ

出せるのに、でも、まだ3年もあるよ!

その間、あんな毎日が続くのかな?どうしよう?)

春樹は、ポーチを渡せず、帰る。

その次の日からだった。


「百合花、俺と結婚してください!」

春樹が、プロポーズをしだしたのは。

遊びに行っても、百合花にお金を、使わせ

無かった。

そんな、春樹の思いは、誰も知らなかった。

ポーチは、朝そっと、置いておいた。


「ハルー今日も?懲りないね?」


「あーこれ位では、へこたれ無いぞ!」


「ハハハハ。」


(百合花が笑ってる。)

それだけで、春樹は嬉しかった。

そんな、ある日

百合花が、顔を腫らせて、当校して来た。

咲達が


「どうしたの?百合花!」


「ハハハハ、昨日、転んじゃって。」

言い訳をしていたが、春樹は直ぐに

おじさんだなと、分かった。


「おはよう、百合花その見にくく腫れた

顔の百合花、結婚してください!」


「見にくくとは何よ!」


「俺が、百合花と、おばさんを守るから!」

春樹は、百合花の耳元で、呟いた。


「えっ!」

百合花の顔が、変わった。

春樹は、無言で頷いた。

百合花は


(ハルーどうして知ってるの?どうして?)

考えたが、分からず、お昼に百合花は

春樹を呼び出した。


「ハルーどうして、知ってるの?」


「お前が、前にポーチを忘れた時に

聞いてしまった、ごめん。」


「ハルーが、謝る事じゃ無いから、あっ!

それで、毎日プロポーズしてるの?」


「百合花と、おばさんを守りたいからな!

でも、まだ、あれから毎日か?」


「うん、会社が、大変だからって毎日だね!」


「おじさんの会社なんだから、自分で何とか

すれば、いいのに何で、百合花が婚約しないと、いけないんだよ!まだ見た事、無いんだろう?」


「写真は見たよ!」


「どんな人だった?」


「キモデブ!」


「うわっ!最悪、何か良い方法は無いかな?

俺、考えるから、百合花しんどいけど

耐えとけよ!」


「うん!ハルーありがとう。」


「結婚する気に、なったか?」


「ハハハハ、何を言ってんのよ、ハルーは

充分モテるでしょう!」

と、かわされる。

学校では、そんな素振りも見せず、明るい

百合花、その姿が、なお春樹の胸を

締め付ける。


(15歳の俺に、何が出来るんだよ!せめて

社会人なら!)

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