第32話 妹がさらわれた気がするのだが…

俺はゆっくり右手をイヤホンに当て、なぜかひどく冷静になっていた。


「なあ、あれってあのときの飛行船だよな?」


『それしかないじゃん!』


そう。前に冒険者としてアリシアと共に初めて依頼を受けたときに、モンスターが凶暴化したとき、俺たちを助けてくれた人たちが使っていた船だ。

しかし、なぜここに現れたのかがわからない。


皆、飛行船を見上げていると、やがてそれは停止し、中から一人の見覚えのない人が現れた。


そいつは辺りを見回すと、すぐに話し始めた。


「イベント中に大変申し訳ございません。ですが、この場に異常な魔力反応が検出されましたので、偵察にきた次第でございます」


そいつは、謝罪の一礼をするも、とても謝罪をしているとは思えない笑みを浮かべていた。

だが、そんなことはどうでもいい。

異常な魔力反応。ここで考えられるのは対戦時に起きた大きな魔力の衝突。もしくは、俺みたいな異常な力を持った魔力を持つ人間。


俺の脳内に一人の人物がよぎった。

再び、イヤホンをタッチし、確かめる。


「クリシャ、音羽を見かけなかったか?」


話してからしばらくして返事が返ってくる。だが、それは少し音がガサついていた。


『いえ、見かけてないです。音羽さんになにかあったのですか?!』


「いや、いい。ありがとう」


ここで、最悪の場合が俺の脳内で形成された。こうなると音羽どころか、俺やアリシアの命も危険にさらされる可能性がある。


あいにく、俺は自分で魔力を測ることはできないため、目で探すしかなかった。

しかも、ゲートは女子→男子は校舎から入って、男子→女子はグラウンドに出る仕組みになっている。


しかも、音羽は防衛をしていたはず。だから、必然的にグラウンドのどこかにいるはずなのにいない。校舎の方もグラウンドからだと全く見えないが、人があまりいないことだけはわかった。


「アリシア、クリシャ、今どこにいる?」


『本部だよ。ロワもくる?』


「いや、それどころじゃないかもしれない。とにかく、3人で手分けして音羽を探してくれないか」


『音羽さんがいないということですか?』


「ああ、そうだ。ひとまず俺がゲートの近くから見た限りじゃ、音羽はグラウンドにいない。もしかして、そっち側にいたりするか?」


グラウンドは広い。しかも、本部とゲートは遠く離れているため、俺が見えていないところも見えるのだが…


『いないね、こりゃ』


「そういうことだ。音質もなぜか下がってきてるから手短に話すぞ。クリシャは校舎を、俺はグラウンド、アリシアは後で一回合流だ」


『『了解!』』


俺は残りの魔力を少し消費し、本部まで秒で移動する。


「ロワ、大丈夫?結構やられたみたいだけど」


そのまま来てしまったため、制服に少し切られた状態のままだった。それでも、今は音羽を探す方が重要だ。


「アリシア、もしかしたら一刻を争う状況かもしれん。とにかくグラウンドにいる可能性は低い。だから、リスキーだけど俺はあの飛行船に乗り込もうと思っている」


「待って、相手の目的はなに?なんで音羽?さんが連れ去られたことになってるの?」


そういえば…と、俺は今更ながらアリシアとクリシャに音羽のことを話していなかったことを思い出した。でも、説明している暇はない。


「とにかく、一回飛行船まで、」


瞬間、校舎方面から俺たちでも急にやられると防げないくらいの衝撃波が走る。

俺とアリシアは、もうなにも話さずとも考えていることは一緒だった。


(校舎になにかある)


と。そんなわけで、俺たちは校舎に向かって本部から人混みを避けながら、校舎までダッシュするのだった。


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そろそろ執筆開始ですねー。というわけでこれから更新頻度落ちると思ってもらってー(笑)

一回の投稿ごとに1000字くらいで出すなら絶対に3日に一回は更新できるけど…そこは考え中です。

あと、だんだんタイトルが考えられない病気が再発しそうです…

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